[社説]ミャンマー軍政の既成事実化を許すな

東南アジア諸国連合(ASEAN)の特使が2度目のミャンマー訪問を終えた。昨年2月のクーデター以降、袋小路に陥っている事態の打開を目指すが、今年3月の初訪問から具体的な進展は乏しく、関与は行き詰まっている。
他方で主要な会合から締め出したはずの国軍の復帰をなし崩し的に認める兆候もある。国軍が市民弾圧の手を緩める気配がない以上、断じて譲歩すべきでない。
議長国カンボジアのプラク・ソコン副首相兼外相が6月末からミャンマー入りした。人道支援の一環で新型コロナウイルスワクチンを供与し、一部の少数民族武装勢力や政党幹部と会談した。
ただし会ったのは国軍に協力的な勢力や政党だ。肝心のアウンサンスーチー氏や、同氏率いる国民民主連盟(NLD)の関係者との面会はまたも実現しなかった。
ASEANは昨年4月、暴力の即時停止や特使による対話調停など5項目の合意を取り付けたが、国軍は約束を守らない。このため10月に首脳会議から「政治的な代表者」を締め出す措置をとった。
情勢はむしろ悪化した。国軍は武力弾圧を続け、市民側の犠牲者は2千人を超えた。6月にはNLD元議員ら政治犯4人の死刑執行を承認し、軟禁中だったスーチー氏は刑務所内に移送した。
見過ごせないのは圧力の緩みだ。ASEANは6月下旬の国防相会議に国軍が任命した閣僚を出席させた。中国の王毅外相を招き、ミャンマーがホスト国となって4日に開いたメコン川流域5カ国と中国との外相会合には、プラク・ソコン氏も参加した。このままでは国軍統治の既成事実化に手を貸すことになりかねない。
ASEAN側から安易に妥協せず、すべての当事者との面会といった合意事項の履行をあくまでも迫らなければならない。対話は継続すべきだが、同時にもっと圧力を強める必要がある。たとえば国軍が「テロ組織」と呼ぶ民主派の亡命政府との接触の可能性も、もはや排除すべきではない。
ミャンマー国軍は2021年2月1日、全土に非常事態を宣言し、国家の全権を掌握したと表明しました。 アウン・サン・スー・チー国家顧問率いる政権を転覆したクーデターを巡る最新ニュースはこちら。