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[社説]政権の信頼揺るがす差別発言

岸田文雄首相は同性婚を巡り差別発言をした荒井勝喜首相秘書官を更迭した。「(同性婚の人が)隣に住んでいたら嫌だ」「同性婚を導入したら国を捨てる人もいると思う」などと語っていた。すぐに発言を撤回したものの、あまりに人権感覚に欠けると言わざるをえない。更迭は当然だ。

首相は「多様性を尊重し包摂的な社会を実現していく内閣の考え方にはまったくそぐわない。言語道断だ」と強調したが、政権の信頼を揺るがしかねない問題だと認識すべきだ。5月に地元の広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)を控え、国際的な目も厳しくなりかねない。

首相は2022年12月にも、性的少数者(LGBT)への不適切な表現などを重ねた杉田水脈総務政務官を交代させている。早くから批判があったのに、政権や自民党は当初かばう姿勢を見せ、対応は後手に回った。

2件も続くと更迭で済む問題だとは思えなくなる。荒井氏は経済産業省出身で政権発足時から秘書官を務め、首相の演説原稿づくりなどを担っていた。周囲にこうした考え方を容認する空気があったのでは、との懸念が拭えない。

実際、秘書官の発言は、首相自身の発言が伏線になった側面がある。首相は1日の衆院予算委員会で同性婚に触れ「制度を改正するとなると、家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と答弁していたためだ。

国民の間では、家族のあり方も価値観もすでに多様化している。この実態を、いったいどこまで認識しているのだろうか。

古い固定的な家族観は同性カップルのみならず、多くの人の生きづらさの要因になっている。大事なのは、現実を直視し、今後どんな取り組みが必要か、政府や国会などで幅広く議論することだ。

その先頭に立ってこそ、真に「多様性尊重」を掲げることができよう。問われているのは政権の人権感覚だ。今のままでは言葉だけがうつろに響く。

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