[社説]原油減産の先に残る不透明感 - 日本経済新聞
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[社説]原油減産の先に残る不透明感

石油輸出国機構(OPEC)と、ロシアなど非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は、10月の原油生産量を9月比で日量10万バレル減らすことを決めた。

2021年初めから続く段階的な増産の方針転換である。景気減速に伴う石油需要の減少を警戒し、値崩れを防ぐ判断がある。

ただし、主要7カ国(G7)がロシア産石油の売買へ新たな制裁導入を決めるなど供給不安は解消されていない。エネルギー価格の高騰が消費国経済の重荷となっているなかで、不透明感が残る石油市場には注意が必要だ。

OPECプラスは20年5月、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要急減を受けて大規模減産に踏み切った。その後、21年からは毎月、生産量を増やしてきた。

しかし、原油需給は供給過剰に転じ、原油価格は足元で下落基調にある。10万バレルの減産量は世界需要の0.1%にすぎないが、産油国が増産路線の転換へ明確な意志を示したととらえるべきだ。

OPECを主導するサウジアラビアなどには、核開発をめぐるイランと米欧などの交渉が進展し、イラン産原油が国際市場に復帰することへの警戒もあるとされる。

需給が緩む要因の一方、G7は12月からロシア産石油の輸入価格に上限を設けることで合意した。

G7は対ロ制裁の一環でロシア産原油の輸入停止を決めている。しかし、インドや中国が輸入を増やすなどの理由でロシアの輸出量は大きく減らず、原油価格の高騰によりむしろ輸出収入は増えたとの分析もある。

ロシア産の売買価格に上限を設けて打撃を与える狙いだが、実効性は不透明だ。ロシアは上限価格を設定する国には売らないと反発している。ロシアが輸出を制限すれば需給が逼迫しかねない。

ロシアは欧州向けの天然ガス供給を減らし、ガス価格の急騰は各国経済を圧迫している。不透明感が晴れない時こそ、エネルギーの供給安定に向けた生産国と消費国の連携が欠かせない。

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