[社説]訪日観光の促進は量と質の両立を目指せ - 日本経済新聞
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[社説]訪日観光の促進は量と質の両立を目指せ

政府が2025年を当面の目標年度とする新たな観光政策づくりを始めた。新型コロナウイルス禍を経て、いま世界の観光需要は急回復している。日本の外国人旅行者の受け入れ数はコロナ前の19年に世界で12位だったが、一段の高みをめざすべきだ。同時に混雑対策などを他の観光大国から学び、量と質の両立に生かしたい。

19年の訪日外国人は3188万人と過去最高だった。しかし海外には首位のフランスをはじめスペイン、イタリア、シンガポール、スイスなど自国の人口を上回る旅行者を受け入れている国も多く、日本の成長余地はまだ大きい。政府も以前、30年に6000万人という目標を定めている。

政府が訪日者数の明快な目標を掲げることは投資や起業への後押し、関連省庁や自治体間の連携、過剰な規制の緩和につながる。しっかりと数値を示すべきだ。

ただし訪日観光ではコロナ前、すでに人数の伸び悩み、1人当たり消費額の減少、中国など特定の国への依存、有名観光地への集中といった課題が浮上していた。今後の成長には経済の面で果実をきちんと得られる仕組みや、地域の受け入れ態勢の整備が要る。

外国人による消費額を受け入れ国別にみると19年の首位は米国、2位はスペインでフランスは3位だ。米国はゆとりのあるビジネス旅行者の多さやエンターテインメントの豊富さが奏功した。スペインは「美食」や芸術、古い建築をもとに旅の付加価値を上げた。

日本も国際会議の地方誘致や埋もれた観光資源の発掘を通じ、付加価値の高い旅を提供すべきだ。欧米の観光客やアジアの富裕層は日本の自然や文化などの深い体験を旅に求める。顧客に合わせサービスを磨き上げたい。高級な宿泊施設も上位の国に比べ乏しい。

今の旅行者は地元の人々の暮らしや文化にふれる旅を好むため、生活空間に旅行者が入りこみトラブルの原因にもなっている。米ハワイ州では地域の観光組織が住民の声をきめ細かく聞き、早期に対処している。海外には観光が地域にもたらす経済効果を算出、公表し住民の理解を得ている例もある。住民参加型の体験メニューを提供すれば国際交流に役立つ。

観光は関係者が多く意見調整に時間がかかる。街並みや生活文化は、いったん壊れると復元は簡単ではない。訪日客が本格回復するまでに対策を進めておきたい。

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