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中国、急増するLNGの長期契約 需給左右する台風の目

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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Earth新潮流

中国が液化天然ガス(LNG)の長期契約を急拡大させている。ウクライナ危機をきっかけに世界規模でLNGの争奪戦が過熱するなかで、中国の動きは台風の目となりつつある。狙いはどこにあるのか。

中国の天然ガス需要は2021年に過去最高の伸びを記録した。LNG需要も前年比18%増となる7890万トンとなり、日本を抜いて世界最大の輸入国になった。

このうちLNG輸入に占めるスポット調達の比率は39%。しかし、22年以降の契約に目を向けると、引き取り期間が10~20年単位の長期契約が急速に増えている。

長期契約が過去最大規模

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査部の竹原美佳部長の調べによると、中国が21年に交わした長期契約は合計23件、数量は2700万トンだった。いずれも過去最大規模だという。

中国石油天然気集団(CNPC)、中国石油化工集団(シノペックグループ)、中国海洋石油集団(CNOOC)の国有の大手3社だけではない。地方政府系のエネルギー会社や民間の都市ガス事業者などが直接、契約を交わすケースも増えている。

契約先は米国とカタール、ロシアの3カ国で4分の3を占める。なかでも米国とは21年1月~22年4月の間に10件、1390万~1480万トン分の契約を交わした。

注目は契約した米国の事業者が、ベンチャーグローバルやシェニエールといったLNGの新興勢力である点だ。エネルギー関係者が「数年前は実現が難しいだろう」とみていたプロジェクトも、中国が長期引き取りを約束したことで動き出した。

安全保障と低炭素を両立

なぜ長期契約が急増しているのか。竹原氏は「中国政府のエネルギーセキュリティーの強化と天然ガスの市場化政策が背景にある」と話す。

21年3月に承認された14次5カ年計画を受けて、国家エネルギー局が22年3月に発表した「現代エネルギー発展14.5計画」(エネルギー14.5計画)は、エネルギー安全保障と低炭素化の両立に力点を置いた。

竹原氏は「近年の冬場のガス不足や電力危機への対処として、政府はサプライチェーン(供給網)の強化と冬場のガスを厚めに確保するよう国有大手に指示している」と指摘する。

加えて自前の受け入れ基地を持つなど、天然ガスの輸入・流通分野で存在感を高める地方政府系や民間の事業者が「高騰するスポットから長期契約へシフトし、調達を最適化する観点から米国産LNGの調達を増やしている」と見る。

米中関係の悪化に伴い、中国政府は米国産LNGに追加関税をかけるなど、両国間の売買は停滞した。しかし、これも20年に追加関税が免除され、新規の契約が動き出した。竹原氏は「米中の政治的な関係が悪化しても長期契約なら供給は止まりにくい。長期契約へのシフトには制裁や禁輸のリスクを回避する意図もあるのではないか」と推察する。

カタールは6割増

ただし、長期契約を増やしたのは米国産だけでない。中東カタールとは21年1月~22年4月に4契約750万トン、ロシアとの間でも5契約576万トン分を契約している。

カタールは27年までにLNG生産能力を、現状の6割増となる1億2600万トンに引き上げる野心的な計画を進めている。新設する巨大プラントについて、CNPCとシノペックが権益の取得に向けて交渉中との報道もある。

東京電力ホールディングス中部電力が火力発電・燃料事業を統合したJERA(東京・中央)は21年末、カタールから25年にわたり引き取ってきた500万トン超の契約を終了した。日本が抜けた穴を中国が埋め、さらに拡大する。

ロシアのウクライナ侵攻はエネルギー安全保障の重要性を再認識させた。欧州連合(EU)は天然ガスの脱ロシア依存へ大きくかじを切り、LNGの調達を急ぐ。日本のLNG輸入の約1割を占めるロシアのサハリン2事業の行方も不透明感が強まっている。

一方、日本国内ではLNG消費の伸びが期待できず、脱炭素の進展も加わって大規模な長期契約を交わす余裕がない。欧州の電力・ガス会社も同じ状況にある。産ガス国側が求める長期契約に応じる力があるのは「中国とメジャー(国際石油資本)」(外資系LNG関係者)に限られる状況が強まっている。

22年は新型コロナウイルスの感染対策などの影響を受けて、中国のLNG需要は減少し、日本が再び最大の買い手となる可能性がある。

また、中国の長期契約の調達量を積み上げると、1億トンに達しており、「いつまでもこのペースでの長期契約は続かない」(竹原氏)。

それでも中国のLNG需要は30年に1億3000万トン、40年には1億6000万トンが見込まれる。20年で倍増する需要をどう賄うのか、中国の動向がLNG需給を左右するのは間違いない。

(編集委員 松尾博文)

[日経産業新聞2022年7月8日付]

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