[社説]急成長後の経営の姿探る巨大IT企業 - 日本経済新聞
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[社説]急成長後の経営の姿探る巨大IT企業

米巨大IT(情報技術)企業の成長が鈍ってきた。増やし過ぎた人員を減らしつつ成長事業への投資は続ける構えだ。各社とも特殊要因による急成長期が終わった後の経営の軌道確立が課題だ。

グーグル親会社のアルファベットアップル、フェイスブック親会社のメタ、アマゾン・ドット・コムマイクロソフトの「GAFAM」5社の2022年10〜12月四半期の売上高は、いずれも前年同期に比べ減少か1ケタ増にとどまった。

5社全てが2ケタ増収を逃すのは、フェイスブックが12年5月に株式上場して以来初めてのことだ。新型コロナウイルス禍で起こったデジタル機器・サービスへの需要急増の反動が響いている。

各社ともコロナ特需の反動だけでなく、主軸事業の成熟化という中期的な構造変化にも直面している。アップルは世界で稼働するiPhoneが昨年20億台を超えたと発表した。メタの各種SNS(交流サイト)の合計月間利用者数は昨年、37億人を超えた。成長余地が狭まっている。

メタやグーグルの広告収入の成長鈍化は世界経済の減速に加え、個人のネット利用履歴を勝手に活用した広告配信が許容されなくなるという、社会規範の構造変化も影響している。

各社ともコロナ禍の急成長期に急激に増やした人員規模の修正に動いている。たとえばメタは22年秋までの3年間で従業員数を2倍近くに増やしていた。昨年秋からこの1月にかけて、アップルを除く4社がそれぞれ1万人を超える人員削減計画を発表した。

メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は決算説明会で「効率」重視を繰り返した。アルファベットのスンダー・ピチャイCEOも、投資の「規律」強化を強調した。成長を追うあまり経営規律が緩んでいたことを素直に反省する言葉だ。

米国では大企業の人員削減ラッシュは起業を増やし、スタートアップへの人材移動を促す。ITバブル後の00年代にグーグルが育ち、リーマン・ショック後にフェイスブックが急成長したのが好例だ。今再び新興勢力の大揺籃(ようらん)期が始まったといえる。

あらためて米企業経営のダイナミズムが目立つ。労働市場の違いがあるとはいえ、古い雇用慣行やデフレ心理から脱却できない日本の経営者は参考にしてほしい。

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