[社説]非正規の待遇改善を今こそ - 日本経済新聞
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[社説]非正規の待遇改善を今こそ

イオンが約40万人いるパートなどの非正規従業員の時給を、今春から平均7%引き上げると表明した。上げ幅は4%の物価上昇率を超える。人手不足などを背景に、非正規でも積極的な賃上げが産業界で広がることを期待したい。

国内のスーパーやドラッグストアなどで働く非正規従業員の時給を平均で約70円上げるという。年収は約8万円増える見込みだ。

イオンは連結の営業利益率が約2%にとどまり、主力の総合スーパー(GMS)事業は営業赤字だ。それでも大幅な賃上げに踏み切るのは、消費の鈍化や人材獲得への危機感があるからだ。

日本全体で非正規従業員は雇用者の約4割を占めるが、収入水準は正社員の6〜7割にとどまる。最低賃金が上がっても、すでにその水準を超える人には恩恵が及ばないとの指摘もある。物価高で家計は圧迫されており、賃上げの裾野を広げる必要がある。非正規の待遇改善を今こそ進めるべきだ。

小売業でも外資系などは時給を高く設定している。優秀な人材を獲得し長く働いてもらうためにも積極的な賃上げは欠かせない。

イオンのような全国大手が賃上げでリードすれば、各地域で追随する動きが広がる可能性がある。小売業は労働集約型で生産性の低さが課題になっている。セルフレジなどデジタル技術で効率化を追求し、継続的に賃上げできる収益基盤をつくってほしい。

非正規の待遇改善は産業界全体の課題だ。経団連は春季労使交渉の指針のなかで、能力開発の支援や正社員化の推進などを具体策に挙げた。不安定な収入は若い人が結婚や出産をためらう一因になっている。スキルを高め着実に賃金があがるよう、企業も政府も力強く後押しすべきだ。

一定の所得を超えると税や社会保険料の負担が生じる「年収の壁」はパートの主婦らの就労調整を招いている。賃上げで逆に人繰りが難しくなるなど弊害が多い。岸田文雄首相は対応策を検討すると表明した。見直しが必要だ。

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