[社説]Twitterの公共的役割に十分配慮を - 日本経済新聞
/

[社説]Twitterの公共的役割に十分配慮を

約半年間にわたる曲折を経て、イーロン・マスク氏による米ツイッターの買収が完了した。政治指導者から庶民まで世界で数億人が情報を受発信する公共性の高い情報基盤の全権を一個人が握った。個人や広告主企業にはその危うさへの懸念が広がっている。

運営次第で偽情報や憎しみをあおる書き込みであふれ、人々が安心して使える情報基盤として成り立たなくなる危険がある。マスク氏はツイッターが世界の多くの人と社会にとって重要なインフラである事実を十分認識し、思慮深く運営してほしい。

マスク氏は「言論の自由の絶対主義者」を自任し、ツイッターのコンテンツモデレーション(不適切な投稿の監視・削除)の縮小を買収の目的に挙げてきた。トランプ前米大統領のアカウントについて、虚偽情報を流布し、議会襲撃を扇動したとして永久凍結した決定にも異を唱えてきた。

だが、民主主義社会が依拠し標榜する言論・表現の自由は、どんな形の言説の流布も放任するということでは決してない。

ネット上かどうかを問わず、差別をあおったり、ウソによって他人を誹謗(ひぼう)中傷したりする言動は許されない。世論を操作するために偽情報を広く流布するような行為も倫理に反し、守るべき言論に含まれない。

フェイスブックなどのソーシャルメディアは近年、まさにそのような有害情報の横行に悩まされてきた。そこで各社が取り組んできたのがコンテンツモデレーションだ。有害か否かの線引きは極めて難しいものの、ツイッターを含む各社は試行錯誤しながら一定の成果を上げてきた。

マスク氏はそんな努力を全否定するのではなく、様々な発信の自由と健全性の最適バランスを探る改善を継続すべきだ。

買収成立後マスク氏は公民権団体など幅広い利害関係者から成る「監督評議会」を設け、その指針に基づいてモデレーションの方針を定めると発表した。歓迎すべき決定であり、実際の運営でも評議会の判断を生かしてほしい。

気になるのは収支改善のために従業員を大幅に削減するとの報道だ。有効なモデレーションには人手がかかる。一方で収益モデルの確立は同社の長年の課題だったのも事実だ。マスク氏には言論空間の公共性と収益性を両立できる経営手腕を期待したい。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません