[社説]FRBの真価問う物価安定と景気の難路

米連邦準備理事会(FRB)は2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通り0.75%の利上げを決めた。通常の3倍の利上げ幅は4会合連続だ。短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は3.75~4.0%となった。
米国は40年ぶりのインフレが続く一方、急速な利上げで景気後退の懸念も強まる。FRBの真価が問われる局面で、以前にも増して周到な政策運営を求めたい。
市場の関心はもっぱら次回12月のFOMCだった。記者会見したパウエル議長は利上げ幅を0.5%に縮める可能性を示唆しつつ、その後も利上げは続き「最終的な金利水準は従来の想定より高くなる」と述べた。市場にとっては硬軟を織り交ぜたメッセージだ。
FRBは目先は利上げペースを落とし、これまでの引き締め効果を見極めたいが、それで金融環境が緩めばインフレ抑制の効果をそぐ。この矛盾を折り合わせる意図が、議長発言からはにじんだ。
「いつ利上げペースを緩めるかより、どこまで金利を上げ、いつまで引き締めを保つかが大事」。パウエル議長はそう述べて12月会合での判断から市場の関心をそらし、利上げ停止までは「まだ道のりは長い」と強調した。
ガソリン高は一服したものの、米消費者物価指数(CPI)は前年比8%台の上昇が続く。堅調な労働市場も賃金に上昇圧力をかけ、2%目標までの距離は遠い。
他方、住宅市場は中古販売の件数が9月まで8カ月連続で減るなど陰ってきた。急速な利上げで30年物のローン金利が7%前後と年初の2倍を超えたのが響く。
国内の民間需要も勢いが鈍り、堅調だった消費の行方を懸念する声もある。政府のコロナ支援金などで積み上がった家計の貯蓄が「想定より小さく、急速に目減りしている」(ブレイナードFRB副議長)との見方からだ。
金融政策が経済に影響を及ぼすまでには時間差がある、とFOMCの声明は記した。この点を意識した注意深いかじ取りが必要だ。
国際通貨基金(IMF)は2023年の世界経済の成長率予想を2.7%に下方修正し、米欧と中国の同時失速を警告した。米利上げとドル高を受けた金融引き締めの連鎖が一因だ。パウエル議長はドル高は一部の国に「試練」だと認めた。世界経済の混乱は自国にも跳ね返る。目配りを求めたい。