[社説]参院のあり方に踏み込む選挙制度論議を - 日本経済新聞
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[社説]参院のあり方に踏み込む選挙制度論議を

1票の格差を是正し投票価値の平等を追求するのは憲法の要請である。衆院小選挙区を「10増10減」して格差を2倍以内にする法律が成立し、28日に施行する。

小選挙区の定数配分はまず各県に1議席ずつ配分する「1人別枠」方式がとられたが、地方に手厚く、格差を生む温床との批判があった。最高裁が3度にわたり廃止を求め、ようやく実現した。定数配分で政治的な思惑を排し、より人口比に近い形にする米欧並みの仕組みが整ったと評価できる。

一方で地方の声が国政に届きにくくなるという懸念も理解できる。これは参院のあり方と合わせて考えたい。参院も1票の格差が問題となっており、参院の選挙制度改革が次の焦点になる。

今夏の参院選の1票の格差をめぐる高裁の判断は合憲7、違憲状態8、違憲1と割れた。最大格差が目安の3倍をわずかに超える3.03倍だったことを考えれば、司法の目は厳しくなっている。

与野党は参院改革協議会で選挙制度の論議を始めた。これまでも議論はしてきたが、結論は先送りしており、司法の目に怠慢と映った面がある。話が進まないのは中長期の課題と当面の対応が絡み合うためだ。議論の整理が必要だ。

抜本的な改革案の一つは参院に地方代表の性格を持たせることだ。それには参院も「全国民の代表」だとしている憲法の規定がからみ、見直しに時間がかかる。憲法論議が必要な抜本的な対策と、法改正や運用で対応できる当面の対策を分けて議論し、できるところから手を付けてはどうか。

当面の格差是正策で手っ取り早いのは都市部の定数を増やすことだが、国の総人口が減る中で安易な定数増は好ましくない。人口の少ない県のさらなる合区も排除せず、なるべく変更の頻度を少なくできる策に知恵を絞るべきだ。

東北や九州といったブロックを選挙区にするのも一案だ。合区と同様、地域に根付いた県民意識との折り合いは難しい。だが、高速道路網の整備による移動範囲の拡大や、県境を越えた地方銀行の統合など、地域経済の広域化も考慮して議論を深めてほしい。

10増10減を審議した衆院特別委は、中長期的な選挙制度のあり方を議論する場の設置を付帯決議した。これまで選挙制度は衆参で別々に議論してきたが、衆参両院が連携して長期的な視野で考える場があっていいはずだ。

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