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[社説]新市場の創出で半導体復活を

先端半導体の国内生産をめざすラピダスが北海道千歳市に工場をつくることが決まった。2025年に試作ライン、20年代後半には量産ラインを立ち上げるという。国産半導体が息を吹き返せるか、ラピダスの挑戦は日本にとって最後のチャンスかもしれない。

ラピダスのつくる半導体は回路線幅が「2ナノ」という先端品で、従来の国産半導体より何世代も進んだ技術を採用する。海外勢と比較しても、量産技術で世界をリードする台湾積体電路製造(TSMC)にも肩を並べるような、野心的な計画である。

だが目標が高いぶん成功へのハードルも高い。まずは微細加工技術を確立できるかが問われる。次世代トランジスタ技術に強い米IBMと提携し、日米連合を組めたのは前向きな材料だ。今後は優れた技術者を内外から集め、研究開発体制を強化する必要がある。

技術だけでなく、先端半導体をどんな用途に使うのか、マーケティング力の向上も欠かせない。今の先端半導体はスマホやゲームに使われることが多いが、今後は自動運転や工場デジタル化など活躍の舞台が広がる。ラピダスの株主でもあるトヨタ自動車NTTなどとも連携し、半導体の新たな市場を切り開いてほしい。

忘れてならないのは競合との戦略的差別化だ。TSMCのような巨人と正面から戦えば力負けする恐れが大きい。TSMCにとってはうまみの小さい多品種少量の市場を狙うなど知恵が問われる。

資金調達は当面、政府依存が続くが、説得力あるビジネスプランを示すことで、金融機関や市場から自力で調達できる体制を一日も早く整えてほしい。

北海道に立地する理由の一つは、同地の再生エネルギーの潜在力の大きさだ。北海道電力の泊原発が再稼働すれば、電力供給の安定感はさらに増す。TSMCが熊本に工場をつくるのも、九州の恵まれた電力事情が背景にある。低廉で安定した電力供給の有無が、各地の立地競争力を左右する。

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