[社説]クールジャパンは民に任せよ

経済産業省が所管する官民ファンドの海外需要開拓支援機構、通称クールジャパン(CJ)機構の業績が振るわない。財務省は成果が上がらなければ統廃合を検討すると通告した。
過去の投資を厳しい目で点検するのは当然だが、官民の役割分担も徹底的に見直さなければならない。クールジャパンは基本的に民間に任せるべきである。
CJ機構の設立は2013年。アニメなど現代文化や生活産業を海外に売り込む目的だった。国が1066億円、民間企業が計107億円を出資し50件以上に投資したが、累積赤字が309億円に達している。
アニメや漫画、ファッション、日本食などには海外にファンも多い。観光や留学につながるなど波及効果も大きい。日本として積極的に育てていくべき分野だといえる。問題はそのやり方だ。
リスクを取り投資をするのは本来、民間企業の役割だ。特に娯楽や生活関連分野は流行などに左右され予測が難しい。私たちは発足時から、官主導の投資対象には向かないと指摘してきた。
機構は日本ブランドの商品を集めた店舗の開設や、日本の映像作品の専門チャンネルに出資した。だが多様な商品から好きなものを選びたいのが消費者の心理だ。
官主導のやりかたと実際の消費者の行動にはズレが生じている。投資案件でも物流や食材開発など、現代文化の発信という原点にそぐわないものが目立つ。
「クールコリア」政策で成功した韓国では、例えば映画の場合、投資は基本的に民間に任せ、政府は映画学校の開設による人材育成や映画データベースの整備と公開などを手がけ、今日の成功につなげた。俳優やアイドルの国際的人気を観光客誘致に生かすなど、分野を横断した連携も巧みだ。
投資は民間の資金を生かし、国は人材育成や海賊版防止などルールや環境づくりに徹するのが筋だ。他国の例も参考に、機構の存廃を判断すべき時ではないか。