[社説]介護保険の持続へ負担増に向き合おう

介護保険制度の見直しに向け、社会保障審議会の部会での議論が本格化してきた。改定は3年に1度で、今回は2024年度からの実施に生かすためのものだ。
高齢化が加速し、単身や高齢夫婦のみの世帯も増えるなか、セーフティーネットとしての介護保険の役割は大きい。安定的に持続できるよう、負担の増加についてもしっかり向き合う必要がある。
現状は厳しい。介護費用の総額は22年度、13.3兆円(予算ベース)となり、介護保険ができた00年度の約3.7倍にまで膨らんだ。利用者の自己負担と40歳以上の保険料、公費が財源だ。
介護予防の取り組みで健康寿命を延ばし、できるだけ介護が必要にならないようにするのも大事だが、改革が進まなければ将来への不安は高まる。
論点のひとつは、65歳以上の保険料の見直しだ。保険料は市区町村ごとに基準額が決められており、全国平均で月額6014円(21~23年度)だ。
国は所得に応じて基準額の0.3~1.7倍を支払う9段階の目安を示している。さらに段階を増やし高所得者の負担を引き上げることなどが選択肢になる。
一部の自治体では、すでに先行して階層を増やしている。負担能力のある人に一定の負担増を求めるのはやむを得ないだろう。ただ、これだけでは限界がある。
サービスを利用したときの高齢者の自己負担は、原則1割だ。所得に応じて2割、3割を払っている人もいるが、まだ少数にとどまる。低所得者に配慮しつつ、これを原則2割にすべきではないか。長寿社会に欠かせない制度であるからこそ、みなで少しずつ痛みを分かち合うことが欠かせない。
一方、給付額の過度な膨張を抑え、サービスを安定して提供できる体制をどう整えるかも大きな課題だ。介護ロボットやデジタル技術の活用をもっと後押ししたい。
介護事業者の統合や連携が進めば、経営の効率化が期待できよう。人手不足が深刻な介護人材の採用や育成にもプラスに働くのではないか。
今回の会議では、要介護1、2の人への生活援助を見直すかどうかや、ケアプランをつくる際の自己負担導入なども論点になっている。長年にわたり、見送られてきた課題だ。少ない負担で多くの給付、という魔法のつえはない。丁寧に議論を進めたい。