/

[社説]選挙制度の再考求める無投票

統一地方選の道府県議選が告示され、議員定数の4人に1人が無投票で当選が決まった。論戦も投票もなくては議会制民主主義の土台が揺らぐ。地方議会の選挙制度を再考するときだ。

選挙のある41道府県議会の総定数は2260で、うち565人が無投票で当選した。無投票の比率は25%となり、前回2019年に次ぐ高い水準だ。特に山梨は6割を超えており、議会の正統性にかかわるといえよう。

投票機会が失われた選挙区は全体の37%の348に上る。岐阜、和歌山、徳島は6割を超える選挙区で論戦が行われない。保守地盤で自民党以外の政党が候補を立てられない1人区が目立つ。

対抗馬を出せない野党の地方での足腰の弱さは、二大政党が根付かない一因でもある。ただ地方議会の選挙制度は戦後ほとんど変わっておらず、人口減少などの環境変化に適合できなくなっている面があるのも確かだろう。

都道府県議会は行政区域を単位に選挙区を置き、人口変動に応じて定数削減や「1票の格差」是正を進めてきた。無投票をなくすには合区を進めるか、全県を1つの選挙区にするかだ。人口の少ない地域が代表を出しにくくなることをどう考えるかが課題になる。

全県を1選挙区にしたうえで比例代表を導入すべきだとの意見もある。これは地方政治で政党色を強め、国政にも影響する可能性がある。十分な議論が必要だ。

定数が複数なら複数の候補に投票する連記投票制も、なり手不足の緩和に効果があるとされる。男性と女性、ベテランと若手など、投票先が広がり、多様な人材が当選しやすくなるためだ。実際、連記制で行われた戦後初の衆院選は多くの女性議員が誕生した。

当時は革新勢力も増えたため、政治の安定を重視し連記制は見直された。だが地方議会では一考に値するのではないか。複雑になる選挙実務はデジタル化で工夫できよう。地方自治を充実させる観点からよりよい制度を考えたい。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません