[社説]FRBは金融引き締めの仕上げを丹念に - 日本経済新聞
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[社説]FRBは金融引き締めの仕上げを丹念に

米連邦準備理事会(FRB)は1日までの米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利上げを決めた。昨年5月以降、普段の2〜3倍幅の利上げを続けていたが通常の利上げ幅に戻した。

インフレが減速し始め、昨春から始まった金融引き締めは仕上げの局面に入りつつある。だが経済・物価の先行きはごく不透明で、丹念な政策運営が求められる。

短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4.5〜4.75%となった。

FRBは4会合連続で0.75%の大幅利上げに動いた後、12月に利上げ幅を0.5%に縮小し、今回はさらに0.25%に縮めた。

パウエル議長は「物価上昇率の低下(ディスインフレーション)過程がようやく始まった」ことを理由に挙げた。一方、「仕事を終えるまでやり遂げる」と述べ、あと2〜3回の利上げが必要との見方も示した。

12月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が6カ月連続で鈍ったが、なお6.5%の高水準だ。失業率も3.5%と歴史的な低水準で、労働市場の逼迫による賃金上昇でサービス関連を中心にインフレ圧力は強い。

金融引き締めはまだ十分な効力を発揮していないとFRBは見ており、ペースを落としながら利上げを続ける判断は妥当だ。

新型コロナウイルス禍に伴う供給網の乱れや資源価格の急騰が重なった今回は、経済や物価の正常化が従来と異なるパターンをたどる可能性もある。住宅販売や消費は減速し始めており金融引き締めの累積効果を見極めつつ、一段と慎重なかじ取りに努めてほしい。

市場との対話も引き続き大事になる。市場では、3月の次回会合での利上げ停止と年内の利下げを見込む声が多かった。パウエル議長は現時点でその可能性は低いと否定したが、なお市場とFRBの見解には溝が残る。先々の市場の動揺を避けるには、丁寧で粘り強い対話が不可欠だ。

国際通貨基金(IMF)は2023年の世界経済の実質成長率予測を2.9%と小幅に上方修正した。中国のゼロコロナ政策が終わり悲観論はやや薄らいだが、先行きは依然として不透明だ。

パウエル議長は「深刻な景気後退を起こさずインフレ率を2%に戻すことは可能だ」と自信を示した。内外情勢を注視し、油断せず景気の軟着陸をめざしてほしい。

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