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[社説]尹氏の演説生かし首相は「徴用工」で動け

韓国の尹錫悦大統領が1日、日本統治下で最大だった独立運動の記念式典で演説した。ナショナリズムが高まる場であえて、日本と協力する重要性を国民に説いたことは意義深く、評価できる。日本政府は尹政権と協力して元徴用工問題の解決を急ぐべきだ。

北朝鮮の核脅威に中国の軍備増強、ロシアのウクライナ侵攻が重なる環境を尹氏は「世界的複合危機」と表現。日本が「普遍的価値を共有し安全保障や経済、グローバルな課題で協力するパートナーになった」と位置づけた。日韓を「加害者と被害者」の関係ととらえた歴代大統領と一線を画した。

北朝鮮の核などを挙げ「安保危機を克服するための韓米日の協力がいつにも増して重要になった」との認識はもっともだ。日韓がいがみ合いを続ける余裕はない。元徴用工問題と日本の輸出管理措置を速やかに収拾させ、信頼関係を取り戻す必要がある。

韓国政府の解決案は韓国司法が日本企業に命じた賠償金を韓国政府傘下の財団が肩代わりする内容だ。元徴用工や支援団体は日本企業による謝罪や賠償を求めている。尹氏が押し切れば野党に政争の具にされ、日韓慰安婦合意の迷走の二の舞いになる恐れがある。

元徴用工の扱いは国家間では解決済みだが、36年間の日本統治が合法か不法かという両国間の絶えない論争が対立の根っこにあり、決着を難しくしている。未来志向の関係づくりにとりくむ尹政権下でも懸案を解決できなければ、日韓関係の正常化は遠のく。

その場合、韓国で差し押さえられた日本企業の資産が次々と現金化されかねない。対抗策の応酬で国民感情が再び悪化すれば日本のインバウンド(訪日外国人)消費への打撃となる。中ロ朝の3正面作戦を強いられる米国の戦略を狂わせ、日本の安保にも跳ね返る。

岸田文雄首相は記者会見で、外交当局の努力を見守る考えを繰り返すにとどめている。当局間の調整には限界があり、政治で決着するほかない。混迷長期化のリスクに目を向け、日本に何ができるかを突っ込んで検討してほしい。

5月に広島で主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれる。民主主義国家の結束を強める好機に、アジアの足元で米国の同盟国同士がもめている状態を露呈する展開は避けたい。日韓両国の着地点を見いだすため、首相が指導力を発揮するときだ。

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