[社説]デジタル改革を加速する決意を新たに - 日本経済新聞
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[社説]デジタル改革を加速する決意を新たに

デジタル庁の発足から1年がたった。すでに成果も出つつあるが、新型コロナウイルス禍で浮き彫りになった日本の行政・社会のデジタル化の遅れは依然として喫緊の課題だ。岸田文雄内閣は国全体のデジタル改革をスピード感をもって推進する決意を新たにし、改革を加速してほしい。

デジタル庁最大の使命は、法制や行政のやり方など国の仕組みをデジタル時代に合ったものに作り替えることだ。その点で、法律と政省令の約1万条項を総点検し、デジタル時代にそぐわない約4千条項について所管省庁と調整を終えて改正・改定のメドをつけたことは評価できる。

一方で、それ以外に法律・政省令で約3千条項のアナログ的な規制が残っているほか、フロッピーディスクやCD-ROMなど前時代の固形媒体によるデータ提出を義務付けたルールが1900項目ある。さらに3万件ある告知・通達・通知レベルの規制の総点検と改定も必要だ。

デジ庁はこれらの規制の改革を2025年夏までに大方終わらせるとしてきたが悠長だった。河野太郎・新デジタル相が就任早々、前倒しするよう指示したのは正しいスピード感覚だ。

ただし、同庁の取り組みの多くが年単位で立法や予算を立案する従来の役所のスピード感で動いているのも事実だ。たとえば、手続きが煩雑なうえ「アジャイル」と呼ばれる柔軟なシステム開発手法に向かない現行の政府調達制度の改革は、具体案ができるのが来年2月になるという。

政府の情報システムのサイバー防衛を内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)とデジタル庁でどう分担するのかについての検討は手つかずに近い。現在各府省庁ごとにバラバラになっている情報ネットワークの統合には、5年程度かかるという。

個人と役所のやり取りのデジタル化に欠かせないマイナンバーカードの7月末の人口普及率は46%と、23年3月までにほぼ全国民に浸透させるとした政府目標の達成は絶望的だ。利便性向上など地道な努力だけでは全国民に浸透しまい。抜本対策が必要だ。

全国に1700超ある自治体の条例や行政窓口に残るアナログ的ルールの改革は難関だ。国は年内にガイドラインを示すが、全国で改革が加速するよう動機づけに知恵を絞ってほしい。

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