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サッカー日本、W杯8強に光 選手層が急激に厚く

サッカージャーナリスト 大住良之

3月30日のモンゴル戦で快勝し、喜ぶ日本イレブン=共同

サッカーチームの成長ほど予測するのが難しいものはない。

毎日トレーニングし、週末ごとに試合をするクラブチームならまだ予想がつくときもある。しかし基本的には年に5回、実質40日間ほどしか活動できない「代表チーム」は、個々の選手の成長だけでなく、相互理解や相互刺激、そして目の前のライバルチームとの対戦のなかで急激に成長することもあれば、負のサイクルに陥って苦しむこともある。

森保一監督が率いる日本代表の最終目標は、2022年11月に開幕するワールドカップ・カタール大会。そしてそこでの「ベスト8」である。その目標に向け、コロナ禍でほぼ1年間活動できなかった時期を経て、20年10月と11月、そして今年3月の計3回の活動で、明確な「成長曲線」に入ったように感じる。

「欧州組」だけで実施された昨年秋の活動では、守備の確認が精いっぱいだった。4試合で2失点。守備は機能した。しかし一方で4試合でわずか2得点。アフリカや中米の強豪が相手だったとしても、攻撃面の連係不足、テンポの悪さ、スピード感のなさは否めなかった。

しかし3月25日に横浜で行われた韓国との親善試合では、その守備の良さを保ちつつ、攻撃面で昨年とは異次元の「進化」を見せた。ボランチの遠藤航(シュツットガルト)と守田英正(サンタクララ)から次々と前線の選手に渡り、大迫勇也(ブレーメン)を軸に攻撃が加速した。3-0というスコアの背景には韓国側の事情(主力の欧州組の何人もが参加できなかった)もあったが、それは日本の攻撃の質自体への評価とは関係がない。

モンゴル戦でハットトリックとなるゴールを決める大迫(左下)=共同

日本の攻撃の質を再確認させられたのは、3月30日のモンゴル戦(千葉)だった。19年10月に6-0で破った相手ではあるが、フィジカルが強く、球際は強い。日本がボールをもつとFW1人を残して全員で守備組織をつくるサッカーは、簡単には攻め崩せないだろうと懸念された。しかし日本は国際サッカー連盟(FIFA)ランキング190位が相手といっても容赦しなかった。韓国戦と同様のハイテンポな攻撃が90分間続き、前半5点、後半には追加タイムでの3点も加えて9点を奪い、計14-0で大勝したのだ。

「目標に向かって確実に前進している」と、森保監督は手応えを語った。

一歩どころか、数歩前進した感のある日本代表をさらに後押しするのは、今夏の東京オリンピックに出場するU-24(24歳以下)日本代表だ。本大会前まで横内昭展監督で進められる(オリンピックでは森保監督が指揮をとる)このチームは、3月26日と29日にU-24アルゼンチン代表と対戦。東京での初戦はまったく試合をさせてもらえず0-1で敗れたが、北九州での第2戦では、第1戦で控えメンバーだった選手たちが目の覚めるようなプレーを見せ、3-0で快勝した。

3月29日のU-24アルゼンチン戦では田中碧(左)の活躍が際立った=共同

中でも際立っていたのがボランチとして出場した田中碧(川崎)である。第1戦は出場停止でプレー機会がなかった田中がピッチに立つと、ボールが収まり、キープできるだけでなく、前線の選手たちに次々と好パスがつながったのだ。

田中と、そしてボランチのコンビを組んだ板倉滉(フローニンゲン、第1戦はセンターバックとしてプレー)がアルゼンチンを圧倒するプレーを見せたことで、前線の久保建英(ヘタフェ)も躍動。「トップ下」としてその頭の良さを存分に見せつけた。

「オリンピック金メダル」を口にするU-24の選手たちだが、より重要なのは、フル代表に入り、来年のワールドカップに向けて日本代表の力を底上げすることだ。田中は間違いなく遠藤や守田、そして今回は呼ばれなかったが日本代表のボランチの柱である柴崎岳(レガネス)らに大きな危機感を与えるはずだ。また、久保だけでなく、アルゼンチン戦2試合では不完全燃焼に終わった三笘薫(川崎)なども、フル代表を脅かす存在の一人になるはずだ。

これまでの実績でオリンピック代表の主力はかなり固まっているのではないかと思われていたが、「サブ組」で戦った北九州での試合を経て、混沌とした状態、すなわち競争がとんでもなく激しいものになった。

森保監督にとって日本代表の競争が激しくなっているのはうれしい限り=共同

それは、森保監督にとって、何よりのニュースではないか。韓国とモンゴルを相手に計17ゴールを挙げたA代表でも、山根視来(川崎)、古橋亨梧(神戸)、追加招集の稲垣祥(名古屋)が得点を記録し、松原健(横浜M)、小川諒也(FC東京)、江坂任(柏)といった初招集のJリーグ所属選手たちが、欧州組に負けないパフォーマンスを見せていつでも戦力になることを示した。

昨年秋に見せた吉田麻也(サンプドリア)と冨安健洋(ボローニャ)、そして遠藤を中心とする守備の固さとともに、攻撃面で長足の「前進」を遂げた日本代表。そこに「オリンピック組」と「Jリーグ組」の猛烈な追い上げが加わり、3月の4試合で選手層は急激に厚くなり、そのレベルも上がった。

厳しさが予想されるワールドカップのアジア最終予選(9月~来年3月の予定)はまだ始まってもいないが、その予選の先に「ワールドカップベスト8」への光が見え始めたように感じられる4試合だった。

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