/

地方競馬、生え抜きが次々タイトル 中央GⅠ馬に勝利

 川崎記念で中央馬を抑えて優勝したカジノフォンテン(右端)。中央競馬のオメガパフューム(左端)が2着、ダノンファラオ(左から2頭目)が3着=共同

地方競馬の生え抜きの競走馬が、主要レースで中央馬相手に相次いで勝ち星をあげている。1月27日に川崎競馬場で行われた地方・中央交流重賞の川崎記念(ダート2100メートル)で、船橋所属のカジノフォンテン(牡5)が中央のGⅠ勝ち馬などを相手に鮮やかに逃げ切り、地方勢に10年ぶりの同レース制覇をもたらした。昨年秋から暮れにかけても、JBCスプリント(大井)、全日本2歳優駿(川崎)といった格の高い交流重賞で、地方デビュー馬が相次いで優勝した。中央以上に著しい業績回復が、馬の資質も引き上げている。

川崎記念 2011年以来の地方馬V

川崎記念は1996年から中央馬に門戸を開き、97年から交流重賞では最高のJpnⅠとなった。歴代優勝馬にはホクトベガ、カネヒキリ、ヴァーミリアン、ホッコータルマエなどの強者が並ぶ。地方勢は98-2000年に3連勝したが、今世紀に入ってからは04年のエスプリシーズ、06年のアジュディミツオー、11年のフリオーソの3勝だけだ。

殊勲のカジノフォンテンは、1番枠を生かして好スタートから先手を取ると、スローペースに落として後半から加速。直線は後続の追撃を許さず、2着オメガパフュームに3馬身差で圧勝。同馬は中央の安田翔伍厩舎(栗東)所属で、地方唯一のGⅠ、東京大賞典を18-20年に3連覇した。3着ダノンファラオも中央馬で、昨年7月に3歳限定のJpnⅠジャパンダートダービー(大井)を優勝している。

カジノフォンテンは母が山形・上山(廃止)や船橋で活躍したジーナフォンテン。3歳秋から急成長し、昨年は南関東の重賞を2勝。中央馬と初対戦した暮れの東京大賞典では持ち味の粘りを見せ、オメガパフュームに首差の2着と大健闘した。「差が差だけに悔しい」とレース後に話していた張田昂騎手だが、今回は堂々の内容で雪辱。「馬のリズムを崩さないよう、力を信じて乗った。道中の手応えもリズムも良かった」と振り返った。

地方競馬には古馬が出走できる牡牝混合の1600メートル以上のGⅠ、JpnⅠが年間6つある。今回の勝利が値千金なのは、この6レースでの地方勢の勝利が約9年9カ月ぶりだったからだ。11年5月にフリオーソが船橋のかしわ記念(ダート1600メートル)を勝ったのが最後で、今世紀に入って地方馬の優勝は6競走で計14勝だけ。うち、アジュディミツオーが5勝、フリオーソが4勝を占める。

 5戦無敗で全日本2歳優駿を制したアランバローズ=共同

2歳戦、短距離でもJpnⅠ制覇

昨年末も地方馬がJpnⅠで中央馬を抑えて勝った。11月のJBCスプリント(大井、ダート1200メートル)では、地元のサブノジュニア(牡7)が、ドバイでGⅠ2着の経験もある中央のマテラスカイ(同)を鮮やかに差し切った。12月には全日本2歳優駿(川崎、ダート1600メートル)で、船橋のアランバローズ(牡)が2着に5馬身の大差で逃げ切り、5戦無敗で優勝。1月に発表された地方競馬全国協会(NAR)の年次表彰でサブノジュニアは年度代表馬に、アランバローズは2歳最優秀牡馬に選ばれた。

中央と地方では賞金水準に大差があり、強い馬が中央に集まるのは当然だ。地方はバブル崩壊後、業績が急激に悪化し、今世紀に9つの施行者が廃止に。残った施行者もレースの賞金や手当を大幅に削減し、不況期も小幅な削減にとどめた中央との差が広がり、馬の競争力にも大差がついた。以前の中央はダート重賞も数えるほどだったが、90年代半ばからは路線整備が進み、97年にはフェブラリーステークスがGⅠに昇格。ダート向きの血統馬も中央に集まり始めた。

それでもダートの2歳戦と短距離は何とか戦えた。いずれも中央に高額賞金の重賞がなく、活躍の場が乏しかったためだ。ダート短距離は中央にはGⅢしかなく、国内最高賞金はJBCスプリントの1着6千万円。2歳のダート重賞は中央にない。過去20年で地方馬は全日本2歳優駿で6勝、JBCスプリントで3勝している。

業績がV字回復 賞金増で馬の資質も向上

東日本大震災直後の11年度の売り上げは約3314億円で、ピークの91年度(約9862億円)の約3分の1まで落ち込んだが、中央競馬会(JRA)のネットシステムで地方競馬の馬券も購入できるようになると、地方の業績はV字回復。20年度(今年3月末まで)は9千億円の大台に乗る勢いだ。これを受け各施行者は賞金・手当の水準を上げている。兵庫ダービー(園田)は、1着賞金が15年の600万円から昨年は2千万円に。高知優駿(高知)も13年の1着27万円が昨年は700万円。レベルの高い大井からも遠征馬が来た。

昨年11月3日、JBCスプリントを優勝した大井のサブノジュニア=地方競馬全国協会提供

おかげで地方生え抜きの活躍馬が次々に現れた。昨秋以降、JpnⅠを制した3頭以外にも、まだタイトルはないが19年の東京大賞典、昨年の南部杯(盛岡、ダート1600メートル)3着のモジアナフレイバ-(牡6)も大井デビューだ。一方で、中央のダートGⅠ馬が南関東に移る動きもある。18年のフェブラリーステークス優勝馬ノンコノユメ(9歳去勢馬)は大井へ、16年チャンピオンズカップ優勝のサウンドトゥルー(11歳去勢馬)は船橋で今も活躍している。南関東には1着賞金2千万円級の地方馬限定重賞が月に1回程度はあり、力があれば稼げるからだ。

セリ市場も活気づいた。主に中位以下の価格帯の馬が売買される北海道市場(HBA)では、昨年の1歳市場の売却総額が116億2030万円(税抜き、以下同)と初めて100億円を突破。「手ごろな価格の馬を買い、地方で勝負する」ことが、魅力的なゲームになった。アランバローズも19年のHBAサマーセールで850万円で購買され、既に8140万円を稼いでいる。しかも馬主が毎月、厩舎に支払う預託料も地方は中央より安い。

ただ、課題もある。主に実戦用の走路で調教も行うため、中央のような多様な調教はできない。厩舎従業員の人手不足も深刻だ。競馬場外部の民間牧場の活用を進める一方、従業員の待遇改善を図る必要がある。

(野元賢一)

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン