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ACL決勝進出の浦和レッズ、最高のチームバランス

サッカージャーナリスト 大住良之

浦和レッズがアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で決勝進出を決めた。8月18日から25日までさいたま市で行われたACLの「東地区」ノックアウトステージ(ラウンド16から準決勝までの3ラウンド)。浦和は準決勝で韓国の全北現代に2-2からPK戦3-1で競り勝ち、来年2月にホームアンドアウェーで行われる決勝にコマを進めた。

浦和の決勝進出は4回目。過去には2007年と17年に優勝を飾り、19年は準優勝の成績を残している。日本のクラブがACLの決勝に進出するのは6回目で、浦和のほかには、ガンバ大阪(08年)と鹿島アントラーズ(18年)がそれぞれ1回ずつ進出しただけ(ともに優勝)。ACLにおける浦和の勝負強さを物語る記録だ。

Jリーグでのチーム状況が影響

今回のいわば「ACL東地区さいたま大会」には、8クラブが出場したが、そのうち日本は最多の3クラブを占めた。浦和のほかは、横浜F・マリノスとヴィッセル神戸である。このACLを迎える直前の段階で、Jリーグでの状況は、横浜Mが首位、浦和が7位、神戸が16位と三者三様。今回の大会結果には、このチーム状況が少なからぬ影響を与えた。

横浜MはJリーグとACLの2冠を狙える立場にあったが、ケビン・マスカット監督は猛暑のなか1週間にハードな試合を3つもすることに慎重になった。神戸は今季Jリーグの優勝候補といわれながら不振に苦しみ、6月下旬に監督交代があって吉田孝行監督が就任。3連勝するなど復調ぶりを見せたが、7月末から連敗を喫し、まだ「残留争い」から抜け出せない状況。「ACLも勝ちたいが、何よりJリーグが大事」という姿勢は明白だった。

大会初日、ラウンド16で横浜Mと神戸が当たる。横浜Mのマスカット監督は「3試合」を考えてか、主力の一部を温存した。だが神戸の吉田監督はこの一戦に集中し、勝ったら2試合目は完全なターンオーバーのメンバーで戦うプランをたてた。その姿勢の違いが、初戦の結果につながった。

神戸はまるでこれが決勝戦とでもいうような集中力を見せ、横浜Mを圧倒した。今季途中にサガン鳥栖から移籍したMF飯野七聖が攻守に躍動し、80分までに3-1とリード。横浜Mは水沼宏太、藤田譲瑠チマなどの主力を送り込んだが、アディショナルタイムに1点を返し、1点差にするにとどまった。

だがこの神戸も、続く準々決勝では先発を7人も入れ替えて臨み、韓国の全北現代に延長の末1-3で敗れる。攻撃陣がそっくり代わっただけでなく、この日の神戸には、横浜M戦で見せた集中力や闘志はほとんど見られず、後半から出てきたブラジル人FWグスタボのヘディングに頼るだけの全北現代を攻めあぐねた。

全北現代はラウンド16で同じ韓国の大邱FCと延長まで戦い、最後に突き放して2-1の勝利を収めたチーム。ACL優勝2回を誇り、いまもスター選手を並べているが、ここ数年で急速に進化したJリーグ勢と比較すると旧態依然としたサッカーで、どの日本勢と当たっても対抗できるようには見えなかった。しかし神戸との試合では先制点を許すとすぐに追いつき、2試合連続の延長戦で2点を挙げて神戸を突き放す粘りを見せた。

準々決勝の組み合わせはラウンド16終了後に抽選が行われて決まったのだが、結果的には、「韓国勢同士の対戦の勝者」×「日本勢同士の対戦の勝者」という形になり、そこから全北現代が勝ち上がった。

この「大会」の勝ち抜きを争う日本勢、韓国勢との対戦を準々決勝まで避けられた浦和は恵まれていた。ラウンド16の相手はマレーシアのジョホール・ダルル・タクジム、そして準々決勝はタイのBGパトゥム・ユナイテッド(ラウンド16で香港の傑志に4-0の勝利)。ジョホール戦では開始8分にショルツのPKで先制し、前半のうちにモーベルグが2点、後半にも交代出場のユンカーが2点を決めて5-0。パトゥム戦では、モーベルグ、岩波拓也、小泉佳穂、明本考浩とたたみかけて4-0で勝った。

全北現代との準決勝は、早々と松尾佑介の先制点が決まったが、その後、疲労が出たのか、スピードダウンして全北現代に攻め込まれ、後半にPKで同点とされた。さらに延長戦の後半に勝ち越しを許したが、終了直前に酒井宏樹がボールを奪取して自ら突破、そこからユンカーが同点ゴールを突き刺した。そしてPK戦ではGK西川周作が相手の最初の2本を止め、3-1で勝って4回目の決勝進出を決めた。

組み合わせにも幸運はあった。しかし浦和の最大の幸運は、「ホーム」で戦えたことだっただろう。最初の2日間は埼玉スタジアムとともに浦和駒場スタジアムを使っての開催。大会の運営主体は日本サッカー協会だったが、浦和のスタッフはレディース部門の人まで総出で運営業務に当たった。だがその苦労のかいはあった。

浦和、チーム状態は完成形の域に

「声出し」が許され、浦和のサポーターのパワーは全開だった。すべてウイークデーの開催だったのに、3試合で6万人を超す観客を集め、最高の雰囲気のなかで戦うことができた。サポーターの声援は、浦和にとって大きなアドバンテージだった。

だがそれ以上に、昨年から進めてきたリカルド・ロドリゲス監督のチームづくりがひとつの「スタイル」として完全に定着したことが、「決勝進出」の最大の力だった。3試合のMVPは、モーベルグ、伊藤敦樹、酒井と「日替わり」だった。全員が次々と「立ち位置」を変えながら効果的なポジションバランスを崩さない動き、前線からのプレスの効率、右の酒井、左の大畑歩夢の攻撃参加、岩尾憲の円熟したゲームリードなど、ちょうどいま、浦和はひとつの完成形を迎えた観がある。

初戦で負傷した大久保智明が2戦目から関根貴大に代わった以外、ロドリゲス監督は3戦を同じメンバーで戦い抜いた。浦和には、横浜Mや神戸のようなJリーグでの緊張状態がないこともあったかもしれない。浦和の勝因は、この大会をさいたま市で受け入れることにした決断、クラブスタッフの献身、サポーターの歌声と、ロドリゲス監督の勝負にかける姿勢が完全に一致したことにあっただろう。

活動量とテクニックを誇る2トップの松尾と小泉で後半なかばまで相手に息をつかせない攻撃を見せると、代わって江坂任とユンカーのコンビが送り出され、攻撃の破壊力はさらに増す。今季の前半に得点力不足で勝ち試合を落とし続けた浦和はもうない。8月にはいってからの7試合で21得点。最高潮に達した「チーム状態」が、ACLの3試合にぴたりと合った。このトーナメントを浦和が勝ち抜いたのは、当然の結果だった。

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