/

eスポーツ、シニアも熱中 交流・健康維持のツールに

プロ選手が生まれるなど競技としての存在感が増しているeスポーツ。その担い手は専ら若者だったが、新型コロナウイルス下の健康維持やコミュニケーションのツールとして、高齢者が楽しむ動きが広がっている。

「いけ、押せ!」「勝ったー」。9月中旬、さいたま市市民活動サポートセンターの一室に歓声が上がった。さいたま市民シルバーeスポーツ協会が開く月に1度の定例会で、高齢者たちが相撲ゲームに興じた。行司役は次の順番を待つ参加者。手製の軍配で好勝負をさばき、本場所さながらの熱気に包まれた。

同協会は2018年に設立された。約40年前、喫茶店などに置かれ、電子ゲームの走りとなった「インベーダーゲーム」に熱中した事務総長の水野臣次さん(64)は「eスポーツは若者のもののようにいわれるが、我々の世代こそ先駆者」。eスポーツを通じた交流促進を狙って協会を立ち上げると、懐かしさも手伝い多くの高齢者が集うようになった。

千葉県から通っているという作詞家、にしかずみさん(72)は「年寄りなりに熱くなる。みんなとわいわいやれるのもeスポーツのいいところ」と話す。会長の森田孝さん(86)は様々な文献に当たってeスポーツへの関わり方を調べており、「一つのゲームに慣れてくると前頭葉があまり働かなくなってくる。色々なゲームをすることが大切」と呼び掛ける。

健康維持の面からeスポーツを活用する自治体も増えている。65歳以上の高齢者の比率が約45%と高い熊本県美里町は、20年度から高齢者がeスポーツに取り組む事業を始めた。同町と熊本eスポーツ協会(熊本市)が昨秋から半年間、町内2地区の高齢者に取り組んでもらい、月に1度、脳波測定などのテストを行ったところ、約9割に注意力向上の効果が表れたという。

高齢者と地元の子どもたちがゲームで対戦する企画も行っており、同町企画情報課の石原恵さんは「地域の交流やコミュニティーの強化でもeスポーツが大きく役に立っている。独居高齢者の交流機会の創出にも有効」と説明。今年度は実施地区を町内の4カ所に増やし、検証の結果に応じ町の福祉事業にeスポーツを本格活用するかどうかを決めるという。

今年6月、eスポーツイベントなどを手掛けるゲシピ(東京・千代田)と東京メトロが、東京都北区にeスポーツの「トレーニングジム」を開設した。高齢者への普及にはこうした施設の整備が有効で、日本eスポーツ連合(東京・中央)は現在、「認定ジム」制度のガイドラインを策定中。同連合の広報担当者は「eスポーツをフックに高齢者と若い人の交流が進むことを期待している」と話す。

実際、さいたま市民シルバーeスポーツ協会では高齢者と若者の交流が進みつつある。昨年行われた高校対抗のeスポーツ大会で全国優勝した都内の高校生の訪問を受け、eスポーツを通じた世代間交流をしていくとの考えで一致した。

高齢者とeスポーツの関わりへの注目度は高く、同協会の定例会には、高齢者向けのソフトやコントローラーの開発を検討するシステム会社や、映像制作会社の担当者らが視察に訪れる。「旅行会社から、旅館でのeスポーツ大会を目玉にした観光ツアーの相談を受けたこともある」と事務総長の水野さん。今や3600万人超に上る高齢者は、若者と同じくeスポーツ市場の重要なターゲットになりつつある。

9月、秋田県で高齢者のeスポーツチームが発足した。IT関連会社のエスツー(秋田市)が運営し、60~64歳の「ジュニア選手」2人を含む14人が大会への出場を目指し、活動している。高額賞金の大会に出ようと技能を磨いたり、仲間との交流や健康維持を目的に身の丈に合ったレベルで遊んだりと、楽しみ方は様々。シニアライフを輝かせるツールとしてもeスポーツの存在感が増している。

(合六謙二)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン