/

スペシャルCK、三笘のドリブル 対スペイン必勝法

サッカージャーナリスト 大住良之

スペインに勝たなければならなくなった。状況はとてもシンプルだ。

引き分けでも、条件が整えばグループを突破できる。しかしその可能性は5%あるかないかだろう。何よりもコスタリカ―ドイツが引き分けで終わるか、ドイツが1点差で勝ったうえで日本が総得点で上回る、もしくは並ばなくてはならない。極めて難しい条件だ。

状況はドイツ戦の後半に似ている。前半1点をリードされ、日本は攻撃に出なければならなくなった。森保一監督は攻撃を強化するための策を次々と繰り出し、選手もそれぞれの役割を完全に理解して戦ったからこそ、あの逆転劇が生まれた。1日(日本時間2日未明)のスペイン戦では、スペインは引き分けでも通過できるというアドバンテージをもっている。勝ち点3を得て1位通過を狙うだろうが、無駄なリスクなど冒さないはずだ。そうした状況で、45分間ではなく、こんどは90分間にわたってハイレベルな攻撃をくり出さなくてはならない。

懸念はある。コスタリカ戦では、2試合フル出場の遠藤航に明らかに疲労の色が見えた。ひざを痛めているという情報もある。数少ない「替えのきかない選手」だけに、スペイン戦までの中3日で回復できるか。初戦で足を痛めた酒井宏樹と冨安健洋がプレーできるかどうかも心配だ。スペインに勝つには、無失点の時間をできるだけ長くしなければならない。守備の安定は不可欠だ。

攻撃陣は、伊東純也、前田大然、久保建英ら、ドイツ戦で先発したメンバーでスタートするのがよいと思う。スピードで崩すこともできるし、スペイン勢との対戦に慣れている久保の存在はドイツ戦以上に重要になるだろう。ことしにはいって守備が非常に良くなっているうえに、ドイツ戦の前半しかプレーしておらず、フレッシュな状態であるのもプラスの要素だ。

浅野拓磨、三笘薫、堂安律といった選手たちを交代で使い、攻撃の目先を変え、変化をつけることもこの試合の重要なポイントだ。ただ、ドイツ戦で成功した3バックにして攻撃的な選手をウイングバックに使う手法は、相手に見切られてしまっているはず。違う形での変化を森保監督は用意できるだろうか。

むしろ5バック気味の3バックでスタートし、不用意なスペースをつくらないようにしつつ、伊東を軸とした思い切りのよいカウンターをかけるという形でスタートするのがいいのではないか。そして三笘を投入するときには、ウイングバックとしてではなく、ウイングとして使い、徹底的にボールを集める。三笘が切れ味の鋭いドリブルで左のコーナーからゴールライン沿いの地域を制圧すれば(いまの三笘には、世界のどんなDFを相手にしてもそうした状況をつくる能力がある)、スペインの守備は混乱し、得点のチャンスが生まれるだろう。

もうひとつ、日本代表にはこれまで隠しに隠してきた「秘密兵器」がある。リスタートだ。なかでもCKである。

日本はドイツ戦で6本、コスタリカ戦でも5本、計11本のCKを得た。しかし得点どころか、シュートに結びついたものも0。速いボールをニアポストに入れるか、高いボールをファーポストに送ってそこに板倉滉を走り込ませるか、大半がいずれかの形だった。いちどだけ戻し気味のパスを送って中央に放り込む形を試みたが、はね返された。

キッカーはドイツ戦では鎌田大地がすべてをけり、相手にヘディングでクリアされた。コスタリカ戦では最初相馬勇紀がけり、堂安律が右をけり、伊東純也も右CKをけった。誰もが同じようなキックだった。

今大会のアジア最終予選で、日本は伊東が大半のCKをけり、まったく効果がなかった。ワールドカップのために世界があっと驚くCKを必ず用意しているはずだが、その練習は最後の1週間にやればいい、カナダ戦(11月17日、ドバイ)でも見せる必要はない――。そう思っていた。大会にはいって「ここ」というとこにその「スペシャルCK」を出せばいいと考えていた。

大会にはいり、ドイツ戦はアディショナルタイムを入れて残り15分以上というときに逆転していたので、それを見せる必要がなくなってしまった。そしてコスタリカ戦では、終盤にはCKがなかった。

そして迎えるスペイン戦である。勝たなければならない試合である。練りに練った「スペシャルCK」をいまこそ披露し、スペインをあわてさせ、世界を驚かせるべきだ。

この「スペシャルCK」で先制し、三笘のドリブルシュートで突き放すことができれば、ドイツ戦以上に価値のある勝利が見えてくる。

2022 World Cup Qatar

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません