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指針違反の朝乃山、自分を見つめ直し再出発を

久々の地方場所として開催される名古屋場所(4日初日・ドルフィンズアリーナ)で、残念ながら大関朝乃山は土俵に上がることが許されない。新型コロナウイルス感染対策ガイドライン違反による6場所の出場停止は厳しい処分だが、最低限のルールを守れなかったのだから当然の結果だろう。初心に帰って自分を見つめ直し、稽古や生活面を改めて出直してもらいたい。

日本相撲協会が原則外出禁止としている場所直前の期間に、接待を伴う飲食店に何度も出入りしていたのだから許されることではない。協会員全員がPCR検査を受けて陰性を確認し、さあ場所に向かおうという時期に協会の看板である大関が遊び歩くなど考えられないことだ。

しかも師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)や協会執行部の聞き取り調査に対し、当初は店への出入りを認めず嘘をつき続けていた。そこが一番の問題だ。もちろん行動自体が良くないことだが、最初から素直に謝っていれば状況は違っただろう。師匠の立場からすれば、弟子が行っていないと強い口調で主張すれば信じるしかない。

師の非常識に弟子がならう?

この件ではスポーツ紙の記者が同席し、虚偽報告にも関わっていたという。ただ、だからといって朝乃山の責任が軽くなるわけではない。誰かに誘われたとしても、行くか行かないかは本人次第。子供ではないのだから、善悪の判断はできるはずだ。

さらに信じられないのは、先代師匠(元大関朝潮)も昨年から何度も会食に出掛けていたということだ。指導する立場の師匠が自らルールを破っていたなら、弟子もそれくらいはいいんだと気が緩んでしまう面もあるだろう。しかも弟子に車椅子を押させて外出していたというのだから、あまりにも非常識だ。

もちろんコロナ下でなければ何の問題もないことだし、我々も現役時代は負けると「験直しだ」といって飲みに出掛けたものだ。今でも「食事くらいいいじゃないか」と誘ってくる知人もいるが、きっぱりと断っている。ルールを守るのは当然のことだし、感染が怖いのでけがの治療や最低限の買い物に出掛けるのもためらうほどだ。それなのに平気でルール違反をする人間がいたら、我々の方が「付き合いが悪い」といわれてしまうかもしれない。

新型コロナの感染が広まってから1年半近くが過ぎ、世の中の多くの人にストレスがたまっている。力士たちもそうで、特に大部屋生活の若い衆はプライベートな時間や空間がなく、気分転換する機会もほとんどない。6月21日、東京都などでは緊急事態宣言が解除されたが、角界は2週間後に始まる名古屋場所に向けて原則外出禁止の期間に入った。世間が若干緩むタイミングで、より厳しい環境に入るのはつらいものだ。

それでもコロナが収束しない中で名古屋へ移動して本場所を開くことを考えれば、今まで以上に慎重な行動が求められる。地方場所は2020年春場所以来、1年4カ月ぶり。宿舎を提供してくれる方々も準備が大変だと思うが、「待っていたよ」と言葉を掛けてもらうと本当にありがたいし、様々な人に支えられているということを実感する。

一方で、相撲に興味がない人は「今なぜ名古屋に来るんだ」と不満に思うだろう。だからこそ全員が検査を受けてワクチンを接種し、きちんと感染対策を講じていることを示す必要がある。周りに迷惑を掛けず、不安な気持ちにさせないように行動しなければならない。朝乃山や、同様に無断外出で処分を受けた竜電の愚行は、そうした努力を無にしかねないものだ。

欠かせない稽古量とメンタルケア

朝乃山の場合、昨年春場所後に大関昇進を決めた際に「もう1場所みた方がいい」という慎重論があった。目安といわれる星数に届いていない中、結果として昇進が認められたわけだが、このような事態になってしまうとその時の判断がどうだったのかということも考えてしまう。大関という重い立場の自覚を持たせるためにも、誰からも文句がつかないような厳しい線引きが必要だったのかもしれない。

昇進後は一定の成績を残していたものの、最近は力強さが落ちたように見える相撲が増えていた。遊び歩くようになったのは少し前からだというし、もしかすると生活面の変化が相撲に影響していたのではないだろうか。報道をみると、稽古量も幕下以下の力士と1日に10~20番程度という日もあったという。いくら何でも少なすぎる。部屋に関取がいないのなら、少なくとも連日50番くらいは取らなければ力が落ちていくばかりだ。

土俵に復帰するのは来年名古屋場所。自らがまいた種とはいえ外出がどの程度認められるかはわからないし、ここからの1年間を考えるときついだろう。監督責任を問われて処分を受けた師匠の高砂親方も、朝乃山を追い込みすぎないよう気を配りながら指導していくのは簡単ではない。精神的なケアもしながらしっかりと行動をチェックする必要がある。

番付はかなり下がるが、照ノ富士のように故障で落ちるわけではないので稽古でしっかりと鍛え直すことはできる。「朝乃山の相撲をもう一度見たい」といってくれる人もたくさんいる。自分には相撲しかないと思うのであれば、支えてくれる周囲の人たちの気持ちを忘れずに日々を過ごすことだ。

(元大関魁皇)

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