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Bリーグ「必死の経営」もう一度 島田チェアマンに聞く

本気の経営が必要。バスケットボールBリーグの島田慎二チェアマンはそう強調する。リーグは2016年の誕生後、着実に成長。新型コロナウイルス禍も耐えてきたが、もう一つ殻を破るにはクラブの意識変革や事業面への投資拡大が欠かせないという。26年からは参加要件を厳しくした新B1(1部リーグ)を創設。昇降格のないリーグへの「転換」というスポーツ界で異例の改革に踏み出す。狙いや今後の方針を島田チェアマンに聞いた。

――プロリーグ誕生により、各クラブは十分「本気」で経営しているように見えます。何が足りないのですか。

「本気の根にあるものの違いだ。昔は潰れるわけにはいかないという本気、今はどう発展させていくかの本気。(16年まで存在したプロリーグの)bjリーグではクラブにオーナーがおらず、琉球の木村達郎さんや秋田の水野勇気社長らが借金を背負ってやっていた。私が千葉Jを経営している時にスポンサー営業に行ったときも『わけの分からないところを応援するなら他のプロスポーツをやる』と相手にしてもらえなかった。知恵がないと死ぬ状態。本気の野武士と(別のリーグにいた)実業団の安定経営との勝負だった。決着がつく前に(国際統括団体の外圧で)Bリーグができたが」

――その後は堅実に成長しています。

「クラブのM&A(合併・買収)が多くなり、大資本がついてきた。地域と資本のハイブリッドが野球、サッカーに対抗できる唯一の道と言ってきたが、その通りになってきた。マーケット的に魅力になってきた証拠だが、安定という副作用も生じた。安定はチャレンジを阻害する。だから26年構想が必要。大きくなったマーケットの中で野武士の精神を持たないと」

――新B1ではクラブを競技成績ではなく、事業規模やホームアリーナで審査します。どう「本気の経営」につながりますか。

「クラブが勝ちたい、降格したくないとチームに投資することで選手年俸が上がってきた。1億円プレーヤーは5~6人、外国人選手を入れたら10人以上。夢があるという意味ではいいことだ。しかし、クラブのスタッフの待遇面に投資が向かわず、職員が入ってはすぐにやめるではノウハウが蓄積されない。地域との信頼関係も築けない。地域創生につながらない。だから昇降格をなくして事業に投資できる環境をつくる。チーム人件費の格差が広がった問題もある。上位の千葉J、A東京と下位で何倍も違う。両チームの攻撃回数がほぼ同じのバスケでは(戦力均衡の観点から)致命傷だ」

――新B1の審査では、基準を満たすクラブが足りない場合、事業規模や平均入場者数などの条件を下げながら4次審査まで行います。基準が緩くなることで目指す姿が曖昧になる危険性はないですか。

「(平均入場者数3000人以上などを条件とする)3次審査までで(原則18チームの上限に達して)終わるのではないか。どさくさ紛れに基準から遠いクラブが入ることはないと思う。新B1に入った後も売上高9億円以上などの条件を維持することも義務付けた。(成績不振で)B2への降格を恐れていたときと同じくらいの緊張感が出るので、本気の経営を後押しできる」

――昇降格のある「開放型」のリーグから「閉鎖型」への移行はクラブの反発を受けるために合意が難しい。世界でも珍しいケースです。

「クラブが同じ危機感を持っているからできたのではないか。戦力不均衡や選手への過剰な投資による経営の圧迫があり、それに耐えるにはM&Aしかない。経営のあり方を選択できるようにするというベースの思いは理解してもらえている。そういうことを伝えたくて本(今月発売の『B.LEAGUE公認 最強のスポーツクラブ経営バイブル』)も書いた」

――この本では理念を持つ重要性について強調しています。

「応援してもらうためにクラブに必要なことは何かと考えると、スターがいるとかめちゃくちゃ強いとかスーパーなコンテンツならいい。そうでないなら地域で何をするのかの存在意義が明確でないと応援してもらえない。それが収益拡大の源泉になる。ステークホルダー(利害関係者)が多いという点がスポーツ産業の一番の特長でもある。スポンサー、オーナー、ファン、自治体など色々な視点から書いた」

――各クラブの成功要因なども詳しく書いています。

「必死の営業努力や生きる力がBリーグの強み。そうした理念や経験をバスケ界以外にもシェアすることでスポーツ産業全体が発展してくれたらという思いを込めた」

――足元を見ると、Bリーグだけでなく日本のスポーツの観客数の戻りが鈍いです。

「相当危機感がある。そんなに簡単に戻らないと思う。来季もこんな状況ならスポーツを見に行く文化は衰退する。そもそも観戦できるかどうか分からない状況で入場者を増やすのは矛盾している。『急に試合が(陽性者の発覚で)中止になるかもしれません』ではお客さんは来ない。法外なことはやれないが、来季は相当アグレッシブに(試合開催のルール設定などを)やりたい」

(聞き手はスポーツビジネスエディター 谷口誠、鱸正人)

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