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数値で測る「選手層」 際立つ王者ソフトバンク

野球データアナリスト 岡田友輔

勝負強さが光るベテラン川島。ソフトバンクの強さを支える控え選手だ=共同

今季のプロ野球は各チームで主力選手の故障が相次いでいる。新型コロナウイルスで大量の離脱者が出るケースもあり、例年に増して控えを含めた総合力が試されている。「選手層」が厚いのはどの球団か。野手を対象に数値化を試みると、王者ソフトバンクの突出度が明らかになった。

セ・リーグは各チームの打席数上位8人、パ・リーグは9人を「レギュラー」、それ以外を「控え」と定義し、それぞれの貢献度「WAR」を算出した。WARはそれぞれの選手が走攻守で生んだ得点価値に基づき、勝利への貢献度を測る物差しである。平均的な控えレベルの選手がゼロになるよう調整されており、普通のレギュラークラスであれば1シーズンで2~3勝分のプラスになる。

WARは本塁打や打点のように、試合数に比例して増える。シーズン前半の現段階では試合数が少ないため、昨季のレギュラーシーズンからみてみよう。

群を抜いていたのはパ・リーグを3年ぶりに制し、日本シリーズ4連覇を果たしたソフトバンクである。9人の「レギュラー」によるWARは計15.8勝分と12球団中3位にとどまったが、驚異的なのは4.9勝分という「控え」による貢献だ。上述の通り、WARは一般的な控えレベルがゼロになるように設定されており、次点の広島は1勝分だった。ホークスの「控え」は控えの域を大きく超えていることが分かる。

「レギュラー」と「控え」の出場機会による差を取り除いて比較するため、600打席当たりに換算した数字をみれば、ソフトバンクの選手層は一段と明らかになる。レギュラー9人の平均は2.9勝分と12球団中4位だったが、「控え」は2.4勝分で、2位タイだった広島とロッテの0.4勝分に大差をつけた。

また内野の要の遊撃守備では、本来はレギュラーの今宮健太がコンディション不良で総イニングの3分の1も守れなかったが、川瀬晃や牧原大成らが奮闘し、チーム全体ではリーグ平均に比べて17.3点も失点を減らした。これはゴールデングラブ賞に輝いた源田壮亮がほぼひとりで守った西武に匹敵する数字だ。つまりレギュラーは固定できなくても、複数人が分担し、リーグ最高レベルの守備力を維持したのだ。

誰が出てもレギュラー並みという高い総合力は今季も維持されている。交流戦前(23日終了時点)のデータに基づいて600打席当たり換算のWARを算出すると、「レギュラー」が2.9勝分、「控え」が1.9勝分。調子のいい選手が「レギュラー」として優先的に使われるシーズン前半にあってリーグで唯一「控え」がプラスをマークし、12球団でも2位の阪神(0.4勝分)に大差を付けている。

帰塁の際に指を骨折した巨人・坂本。今季は各チームで主力の離脱が相次いでいる=共同

今年のホークスは4番のジュリスベル・グラシアルが試合中の負傷で途中離脱したほか、今宮やアルフレド・デスパイネといった「レギュラー」も打撃不振に苦しんでいる。彼らの穴を埋めているのが牧原、川島慶三、明石健志といった面々である。グラシアル以外にも千賀滉大、東浜巨といった先発の柱、抑えの森唯斗がそろわない布陣は普通のチームなら崩壊の危機だが、分厚い選手層がモノをいい、涼しい顔で首位争いをしている。

控えの充実はフレキシブルな戦いを可能にする。ポジション、打順を固定せず、各選手の状態や相手との相性を考慮した融通むげな日替わりオーダー。多くの選手が複数ポジションを守れ、誰が出てもそれなりの仕事ができるとなれば、レギュラーを戦略的に休ませて離脱のリスクを減らすことができるし、離脱や不調があっても致命傷になることを避けられる。フル出場が難しいベテランたちにとっても、バックアップ要員であれば休みながらコンディションを維持できる利点がある(ただし付け加えておくと、今年は「控え」の出場割合が昨年までに比べてやや低く、レギュラーへの負荷が高まっている。レギュラー陣の年齢が高めのソフトバンクだけに、少々不安な材料ではある)。

柳田のような代えのきかない大黒柱の離脱を防ぐことが重要だ=共同

球界随一の選手層をもってしても埋め切れない穴が開くことはある。開幕直後の故障で柳田悠岐が長期離脱を強いられた2019年のソフトバンクは「レギュラー」のWARの平均が1.9勝分と12球団中9位に落ち込んだ。控えの平均はトップの1.6勝分だったが、レギュラー陣が大活躍して平均3.6勝分のWARを記録した西武に及ばず、優勝をさらわれた。

長丁場のシーズンを限られたレギュラーだけで完走するのは現実的ではない。故障者が出ることを前提に、簡単には揺るがない選手層と起用の幅を確保しつつ、代えのきかない大黒柱の離脱は何としても防ぐ。各チームのフロントや首脳陣には、1軍枠やベンチ枠をフル活用したチーム力の最大化が求められている。

おかだ・ゆうすけ 千葉県出身。大学卒業後、民放野球中継のデータスタッフやスポーツデータ配信会社勤務を経て2011年に独立。株式会社DELTAを立ち上げ、野球のデータ分析やプロ球団へのコンサルティングなどを手がける。「デルタ・ベースボール・リポート4」を3月発刊。

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