/

夏の福島競馬、苦難越え開幕へ 地震被害克服に努力

2月の地震で被害を受けた福島競馬場内。通路の天井が崩れ、壁も壊れていた=JRA提供

いよいよきょう7月3日から本格的な夏競馬が始まる。関東・関西の主場での開催に代わって、10週間にわたる、いわゆる「ローカル開催」が続く。普段とは違った雰囲気を味わえるので、筆者は「夏競馬」が大好きだ。旅をしながら現地で競馬を見るという楽しみ方は、今年も難しいかもしれないが、ラジオ、テレビを通して、全国の競馬場へ思いをはせていただければと思う。

特に注目は、3日に始まる福島開催だ。2月の地震被害のため、今春は開催できなかったが、多くの方々の努力により夏の開催には何とか間に合った。今回は、開催にたどり着くまでの舞台裏をのぞいてみようと、福島競馬場施設整備課の飯田哲也さんにお話を伺った。

スタンドは10年前と同じ揺れ

2月13日、東北地方を大きな地震が襲った。長時間、揺れが続き、しかもその揺れが少しずつ強くなるという、10年前のような地震だった。東京にいた筆者も当時を思い出し、恐怖を感じた。2011年3月11日に起きた東日本大震災の余震とされ、地震の規模を示すマグニチュードは7.3。最大震度は6強を観測した。JR福島駅からほど近い福島競馬場でも、大きな揺れを観測した。施設整備課の飯田さんによれば、競馬場のスタンドの震度を調べたところ、5強だったという。

実は11年の地震の際も、福島競馬場の震度は5強だった。マグニチュードは今回の方が小さかったが、競馬場のスタンドは10年前と同じくらい揺れたことになる。それだけ大きな地震だったため、やはりスタンドも被害を免れなかった。特に被害が大きかったのが上階、特に6階であり、中でもファンエリアと来賓室エリアをつなぐ区域だった。この区域の一部では、空調の配管やスプリンクラーが破損し、天井も一部落下した。

ラジオNIKKEIの放送ブースは、被害の大きかった場所からそう離れていない。筆者も上の写真の場所をしばしば通っていた。それだけに、天井の一部が落下しているこの写真を見たとき、非常にショックを受け、心配になった。ただ、飯田さんによれば、10年前と比べると、今回は被害状況が限定的だったという。

来賓室の天井も崩れ、断熱材が散乱していた(2月)=JRA提供

東日本大震災ではスタンド全体に大きな被害が発生し、競馬再開には1年以上を要した。しかし、今回の地震では、大きな被害が出た場所がスタンドの一部で済んだため、春開催こそできなかったものの、夏の開催にはどうにか間に合った。福島競馬場では、東日本大震災の後、今後も大きな地震が起こることを想定して、スタンドの修理と補強を行ったという。こうしたかいもあって、前回と同程度の揺れを観測したにもかかわらず、今回は被害を抑えることができた。10年前の地震が教訓として生かされた証拠である。

福島競馬場では今回の地震の後、被害があった場所の修理に加えて、新たな補強を進めたという。地震をなくすことはできないが、起きた際に「できるだけ被害を小さくする」ことはできる。どうすれば被害を最小化できるか、施設整備課では様々なシミュレーションを行い、補強を進めてきた。スタンドに限らず、競馬にかかわる様々な施設の整備も進めている。「より安全に、安心して競馬を楽しんでもらう」というのがモットーという。我々が何気なくスタンドから放送を行っているのも、同課の方々をはじめ、多くの方が安心できる環境を整えてくださっているからだということに改めて気づかされた。まさに、縁の下の力持ちである。

「競馬愛」に満ちた街・福島

競馬を愛する人が多いのは、福島の特徴である。中継で福島を訪れるたびに、地元ファンの皆さんの「競馬愛」を強く感じる。もちろんどの競馬場でもファンの熱気は感じるのだが、ひとりひとりから伝わる「競馬熱」に関しては、福島競馬場はどの競馬場にも負けないだろう。競馬場に限らず、福島駅にも競馬開催を告知するポスターが至るところに掲出され、飲食店へ行けば、隣の席から当たり前のように競馬談議が聞こえてくる。

それだけに、新型コロナウイルスの影響で無観客開催が続いたこと、そして今年の春の開催がなかったことは、地元の方々にとって大きなショックであったはずだ。地元の方の反響について飯田さんに伺うと、やはり福島競馬場への開催や馬券発売などに関する問い合わせは非常に多かったといい、今も毎日約30件は来るという。ファンの皆さんの熱い思いに応えるべく、競馬場職員の方々も、一日も早い入場再開に向けて尽力されている。

この夏の福島開催は、残念ながら無観客だが、ウェブ上のイベントは行われる。ウェブ抽選会の賞品として、「伊達ニット」のクッションやトートバッグといった福島県産品が用意されている。競馬場に行けない分、ぜひネットを通じて福島競馬を楽しんでいただきたい。そしてファンの入場が再開され、新型コロナウイルス感染状況が収束し、今まで通りのファンの歓声が競馬場に戻ってくる日を筆者も待ち望んでいる。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 小屋敷彰吾)

各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連キーワード

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン