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大谷が2021年に残した言葉 点と点つながって飛躍

スポーツライター 丹羽政善

歴史には言葉がある。

2021年、大谷翔平(エンゼルス)が残した言葉は、文字数にしてざっと8万字に及ぶ。それは活躍の度合いに比例するが、一部を紹介するにしても限りがある。

そこで今回、改めて一字一句をたどったところ、その時点ではまだ活躍を裏付けるものではなかったが、後になって点と点がつながった――なるほど、そういうことだったのかと納得させられた言葉を、キーワードに沿って整理してみた。

左膝の使い方

「去年(2020年)は、どうしても上体でさばきにいくしかなかったので、それなりの数字しか残らなかった。そういう技術の数字が残るというのは、いい勉強になった。改めてしっかりバランスを保ちながらスイングできたときっていうのは、良い見え方で見送れてますし、コンタクトしたときにも自分の描いている打球が打てる」(3月1日)

まだキャンプ序盤。ようやく、オープン戦が始まったばかりだったが、早くも、前年との違いを実感していた。 

ポイントは19年9月に手術をした左膝の回復。左膝が使えないと、どうしても上半身に頼る打ち方になり、最後の変化球にも適応できない。また、下半身の力が使えず、飛距離も出ない。

20年は左膝に負荷をかけられず、打率1割9分、7本塁打に終わった。結果は最悪でも、小手先の対応では相応の結果しか残らないことを、身をもって知ったことは収穫だったよう。この言葉は、シーズンに入って早々に証明された。

動作解析

「決めにいったときに、引っかかるボールが多かった。それは投げにいくタイミングが早い。特にランナーを背負っているときに、目線も一回切ってますし、それによって踏み込みのタイミングと(腕を)振るタイミングにずれが出てくる。特に決めにいったような球っていうのは、もうちょっと力入れてやろうとか、欲を出しがちなので、そういうところでストレートの質っていうのは変わってくる」(3月5日)

先ほどの打撃の話もそうだが、大谷は昨年、動作に関する話を度々した。20年シーズンが終わると、彼は米シアトル郊外にあるトレーニング施設のドライブライン・ベースボールで動作解析を行ったが、それと関係しているのではないか。

例えば、打撃において指摘されたことの一つが、前項で触れた下半身と上半身がうまく連動していないということだったという。大谷自身もそれは感じていて、自身の感覚と動作解析の結果が一致した。

打撃の動作解析においては 体の各部位がどう始動し、どのタイミングでピークを迎えているかを分析できる「Kベスト」というデバイスを使用したようだが、投球メカニックにおいては、全関節の動きを可視化できるモーションキャプチャーを使った動作解析が、同施設では可能だ。

大谷がそこまで行ったかどうかは明らかになっていないが、踏み込みと腕の振りのずれも、モーションキャプチャーであれば正確に計測できるため、大谷の言葉を改めてかみ砕くと、動作解析から何を学んだかが、透ける。20年のオフに行ったこれまでとは異なる取り組みは、飛躍の一翼を担ったか。

リアル二刀流

「自分自身で打って点を取るならそれだけで楽になる。取ってもらった点数というのはどうしても大事に、大事にしたがる。もし自分で取れるならある程度、自分で役割もやったという自信もあると思うので、よりアグレッシブにマウンドで攻められる」(3月21日)

「単純にサンプルが少ないというだけなので、僕も含めてサンプルが増えてくれば、どういうふうに使っていくのがベストなのかっていうのがよりわかりやすくなる。まずは自分用のスケジュールというか、そういうものを見つけていけたらいい」(4月3日)

「(前年も)監督に練習のし過ぎだと言われていたので、もちろん百六十何試合かある中で毎日毎日、何百本も振るっていうのは効率がいいのか悪いのかっていう、感覚とのすり合わせだと思うので、悪いときでももちろん休むのも必要ですし、振ることも必要なので、今の自分にとっての解決策、最善が何なのかなっていうことをまず考えればいい。今の場合は極力振らないようにしてます。なるべく効率よくその日の練習を終えられるように考えています」(4月3日)

初めて登板日に打席に立ったのは3月21日。この時点では、シーズン中も同様の起用を続けることに関して、監督も大谷も明言はしなかった。しかし、実際はキャンプ開始の時点で、そのシナリオは組まれていた。それを知った上で改めて言葉を整理すると、リアル二刀流を前提に話をしていることが分かる。大谷は昨年、開幕戦以外は外で打撃練習をしなかったが、そのこともすでににおわせていた。

なお、ジョー・マドン監督は今年、大谷の起用法にさらに柔軟性をもたせ、降板後に守備につかせることもほのめかしている。昨年はDHを解除したケースも含めると、7試合で守備についているが、この数がさらに増えそう。なお、二刀流においては、こんな言葉も。

「要所要所で98とか99、100マイルを見せることによってスプリットも生きてきますし、また、スプリットを意識した時に99、100マイルを投げることで逆もしかり。自分がやられて嫌なことをやるだけ」(5月5日)

最後の「自分がやられて嫌なことをやるだけ」という言葉には、二刀流の利点が凝縮されている。7月以降、特に左打者に対する攻めのパターンが変わったが、自分が打者だったら、どう攻められると嫌なのか――その心理が反映されていた。打者として打席に立つ大谷にしか、わからない視点ではなかったか。

新球への挑戦

「(ブルペンでは)チェンジアップも投げました。日本のとき、最初はチェンジアップをメインで投げていて、そこからスプリットメインにシフトした感じだったので、両方投げていこうかなというか、久々に投げて変化も良かったので。基本的には落ち球系だとは思うんですけど、より横の動きメインの球になればいいなと思ってます」(2月25日)

「(以前とは)握りはちょっと違いますね。落ち球としてよりは、横の変化として投げたいなとは思っているので、抜くかどうかというよりかは、しっかりと(左打者から)逃げるように変化できるかどうか、っていうのが一番大事かなと思います」(2月25日)

キャンプで練習していたチェンジアップは結局、一度も試合では投げなかった。実戦で使えるほど、精度が上がらなかったということか。

大谷がチェンジアップを必要とするのは、本人が「左打者から逃げるような」と口にしているように、左打者対策である。ただ、昨年9月19日にスプリットの握りを変えると、チェンジアップのような、相手が左打者であれば、外角低めに沈んでいく軌道に変わった。

狙ったのか、偶然か。いずれにしても今季、握りによって軌道の異なる2つのスプリットを投げ分けられるなら、さらに投球の幅が広がりそうだ。

最後に、今季を意識した言葉をまとめた。昨季終盤、プレーオフ出場が事実上断たれてからは、先を見据えた発言が増えた。

今季へ

「個人的には投げないと成長できないというか、もちろん、今年で終わるわけではないですし、来年以降もどんどん投げ続けたいなという意欲はあるので、一試合一試合、より来年につながるように。チームとしてもそういう方針だと思うので、正直、つらい9月ではあるかなとは思いますけど、こういう9月を過ごしたくないなって思って来年、また頑張れるように残りの試合も頑張りたい」(9月19日)

「もちろん、(本塁打王を)取りたいなという気持ちはあるっちゃありますし、残りも少ないので、取りたいという気持ちもありながら、一打席一打席いい感覚で、最後良い感覚で終わるか、悪い感覚で終わるか、オフの取り組みも変わってくると思うので、まずは良い打席を増やしたいなっていうのが一番」(9月19日)

「甘い球の絶対数も少ないので、良いバッティングができる機会もなかなか難しいとは思いますけど、自分の成長のためだと思って、そこでもしっかり成績を残せるように工夫しながら頑張りたい」(9月19日)

「(オフの練習の)基本的な流れは一緒だと思いますけど。トレーニングももっとハードなものにしたいですし、まだまだ上にいけると思っている。今年以上のパフォーマンスが出せるようにそういうオフシーズンにしたいと思っています」(10月3日)

シーズン終盤、プレーオフ出場を争っているチームは、大谷との勝負を完全に避けるようになった。一方のエンゼルスは、その争いから脱落。大谷にとっては、タイトル争いさえ、まともにやらせてもらえないフラストレーションのたまる日々となった。ただ、前年の不振から多くを学んだように、今回もそれをプラスに捉えていた。苦しんでこそ得られるものがある。こうした経験をしたからこそ得られるものがある。それが将来につながる――と。

例えば、勝負を避けられていた時期は、ボール球に手を出し、「強引になっている」と話したこともあったが、であれば、どう対処すべきだったのか。そこにたどり着いたこと自体が財産になりうる。ホームラン王も結局は取れなかったが、それを意識して狙い、もがいたからこそ、得たものもあるのではないか。

昨年、大谷が残した実績は投打とも申し分ない。しかし、その自信以上に、終盤の苦しみこそ、今季の飛躍への礎となるのかもしれない。

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