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W杯まで2カ月 サッカー日本代表、全てがかみ合った

サッカージャーナリスト 大住良之

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ドイツのデュッセルドルフで行われたサッカーの国際親善試合、キリン・チャレンジカップを、日本代表(FIFAランキング24位)は1勝1分けで終えた。米国(同14位)に2-0で完勝、先発を11人入れ替えたエクアドル(同44位)には0-0の引き分け。近年これほど多くの収穫を得た記憶がないほど、2カ月後に迫ったワールドカップ(W杯)カタール大会へ意義深い2試合となった。

日本サッカー協会の英断

まずは日本サッカー協会(JFA)を称賛したい。カタール入り前の最後の国際親善試合。「壮行試合」と銘打ち、日本のファンの前で試合をしたいところだったはずだ。韓国やオーストラリアは国内でそうした趣旨の試合を行っている。しかしJFAはデュッセルドルフで2試合を組んだ。

チームの3分の2、主力の大半を占める「欧州組」が、日本までくる負担(長時間のフライト、時差)を考慮し、できるだけ良い条件でW杯への準備を進めさせようとした。

3年間近くになろうとしている新型コロナウイルス禍で、財政的にも大きな打撃を受け、JFAは来年には所有ビルを手放し、賃貸ビルに移る。それでも国内での代表戦で得られる収益より、チームの強化を優先したのである。

「代表チームファースト」の姿勢が、森保一監督と選手の奮闘を引き出した。米国戦は、過去20年間ほどの日本代表戦でも最高に近い内容の試合。森保監督が標榜してきた「良い守備から良い攻撃」の言葉どおり、FW前田大然(セルティック)を起点に前線の選手たちが組織的に相手のパスコースを限定し、繰り返し相手陣でボールを奪った。MF鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)が決めた25分の先制点は、まさにその言葉どおりのゴールだった。

エースのFWクリスチャン・プリシッチを欠き、米国の調子が万全ではなかった。それを考慮しても、90分間相手に数えるばかりのチャンスしか与えなかった試合ぶりは称賛に値するものだった。

先発全員を入れ替える

4日後のエクアドル戦は、W杯で勝ち上がるための勇敢なチャレンジだった。米国戦で最高のプレーを見せたチームから、先発の11人を全員入れ替えたのだ。

以前にもこういう形で連戦を戦ったことはあったが、「即席チーム」では日本得意のコンビネーションを発揮できず、まとまらないまま終わってしまうことが多かった。エクアドル戦は相手のスピードのある攻守に劣勢には回ったものの、次第に落ち着き、「このチームでも十分勝負できる」と確信をもつことができた。

W杯を想定すれば、初戦のドイツ戦には、最高の布陣で勝負をかけなければならない。森保監督は「全員が疲弊し尽くすほどでないと、良い結果は得られない」と語る。2戦目のコスタリカ戦。疲れきった選手を休ませ、大半を入れ替えたメンバーで粘り、最後の時間に主力を投入して勝負をつける――。「そうした選択肢が使えるという確信を得た」と森保監督は語る。

エクアドル戦に出場した11人が全員良かったわけではない。「トップ下」で先発、67分までプレーしたMF南野拓実は、今季移籍したフランスのモナコで出場機会がほとんどなく、完全に試合カンを失っていた。所属のドイツ2部デュッセルドルフで力を発揮できていないMF田中碧も、昨年までの圧倒的な存在感が消え、プレーのタイミングも狂っているように見えた。

たくさんのオプションを手に入れた森保監督

ドイツやスペインと比較すれば、恐れる必要のないコスタリカといえども、大量に選手を入れ替えるとなると、個々の選手の調子の見極めが非常に重要になる。エクアドル戦のように何人かでも「穴」になる選手がいたら、勝ち点を得る可能性は低くなってしまう。

そうしたポジションにドイツ戦で奮闘した選手を半分ずつプレーさせられれば、最後のスペイン戦を再びフレッシュな主力で戦うことができる。PKをストップしたGKシュミット・ダニエル(シントトロイデン)や、長友佑都(FC東京)、伊藤洋輝(シュツットガルト)、谷口彰悟(川崎)といったDF陣が奮闘し無失点で粘ったことは、森保監督にたくさんの「選択肢」をもたらした。それが今回の最大の収穫だった。

公平にみれば、エクアドルのほうが、FIFAランキングでは上位の米国より手ごわかった。個々に強く、チームとしても非常にまとまっていた。日本のプレスをテンポの速いパスで切り抜けると、一挙に攻撃のスピードを上げた。それに押されながらも耐え、終盤には交代出場のFW相馬勇紀(名古屋)やMF遠藤航(シュツットガルト)、DF吉田麻也(シャルケ)らが相手を圧倒したことは、W杯出場を決めてから半年で日本代表が大きく伸びたことの証明だった。

W杯8強もリアルに?

2018年秋に始まった森保監督のチームづくりは、W杯アジア最終予選では苦しみ抜いたものの、4年間で大きく前進し、どんな強豪とW杯で当たろうとも「勝ち抜き」に希望がもてるところまできた。信念を貫いた森保監督と、それに応えた選手たち。最高の試合環境を用意したJFA。全員の足並みがそろい、米国、エクアドル戦を通じて、日本代表は目標である「W杯ベスト8以上」に向け大きく前進した。

2022 World Cup Qatar
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