日本代表、ドイツ戦の積極性どこへ コスタリカに敗れる

負け惜しみに聞こえるかもしれないが、コスタリカが強かったわけではなかった。日本がもっと何かできたはずだった。もっと戦えたはずだった。そんな思いが敗戦後の選手からにじむ。「自分たちがうまくいっていなかった」と交代出場の伊東の目には映ったという。同じく途中出場の三笘は「(今後は)今日のような試合をして、終わった後に全員が後悔が残るような戦いには絶対にしないように」と自戒を込めるように言った。
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5バックを決め込む相手をどうこじ開けるか。アジア予選から何度も直面してきた「宿題」に、日本はチームとして満足な答えを出せなかった。「5バックを崩すには(最終ラインの)裏を狙う選手が絶対に必要。そこでギャップができたところに味方が入り込む、そういう連動が必要だった」と長友が振り返る。
「単純な攻撃でなく、常に選手が絡んで(相手の)目線をどんどん変えていく攻撃が……。後半は少し増えて得点のにおいがするシーンが増えたけれど、90分間それをやれればよかった」と山根。コスタリカは守備の目線も定まり、前向きの守備に勢いがつき、肉弾戦の強さが引き出された。「一個一個の球際などで上回られたところで、僕たちの前にこぼれる(はずの)ボールが相手にこぼれるというシーンは少し多かった」とGK権田は感じたという。

前に出ようとする積極性の矢印の強弱の違いで、日本の迫力はそがれ、凡ミスが失点につながる流れが生じる。81分の自陣での中途半端な浮き球クリアについて、当事者の吉田はパスをつなごうとした結果だといい「つなげるスペースはあったけれど、前に蹴るのでも良かったと思う」と反省交じりに語った。そこから持ち込まれた決勝点が、日本が浴びた唯一の枠内シュートだった。
このチームは、澄まして余裕を持てるときの方が試合の出来が良くない気がする。追い込まれ、がむしゃらに前へ出ざるを得なくなった苦境の方が、本領が引き出されるような。背水の陣だったW杯最終予選のホームのオーストラリア戦、23日のドイツ戦の後半もそうだ。

「無失点を続けながら、どこかで先制点を取るプランだった」と伊藤は語った。0-0で推移することをOKとしたわけではないだろうが、引き分けでも最悪ではないという想念が選手の頭の片隅によぎったことが、一番望まない結果を招く遠因になったのか。先手を奪うことが最善の策、ということかもしれない。
追い込まれてスペイン戦を迎えることになった。全てをなげうってでもアグレッシブに出ねばならなくなったことが、よい方向へ転がると思いたい。
(アルラヤン=岸名章友)
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