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池江の復調、常識覆す 星奈津美さんの日本選手権展望

ジャパン・オープンの男子200㍍自由形で優勝した松元=共同
東京五輪の代表選考会を兼ねた競泳の日本選手権が3日、東京アクアティクスセンターで開幕する。新型コロナウイルス禍のため1年遅れで行われる今大会は、「一発選考」で五輪切符が決まる大一番。2012年ロンドン五輪、16年リオデジャネイロ五輪銅メダルの星奈津美さんに、大会の見どころを語ってもらった。
星奈津美さん

本来なら1年前の今ごろに行われるはずだった今大会。開幕直前に中止が決まり、東京五輪も1年延期となり、選手にとっては苦しい1年だったと思う。実際、「モチベーションを保つのが難しい」という声を多く聞いたし、トップ選手であればあるほど、プールに入れない期間が続いた影響を少なからず感じさせた。例年に比べ試合数が減ったため、自分の状態をこまめに把握することも難しかっただろう。

そんな中でも、2月のジャパン・オープンで200㍍平泳ぎを制した佐藤翔馬(東京SC)や同大会400㍍個人メドレー2位の井狩裕貴(イトマン近大)ら、勢いのある男子の若手選手が次々と現れたのが印象的だった。東京大会の1年延期がなければ代表権を狙える位置にいなかった選手たちが、この1年を有効に使って一気に成長してきたように思う。

大会は男子が引っ張る形になるだろう。その先頭に立つのは19年世界選手権で200㍍自由形銀メダルの松元克央(セントラルスポーツ)。苦しい1年の中でも「五輪で金メダル」という目標をぶれることなく見据え、1月には日本記録を更新した。安定した成績にはエースとしての覚悟や責任のようなものを感じる。

その松元も出場する100㍍バタフライは混戦が予想される。水沼尚輝(新潟医療福祉大職)ら五輪派遣標準記録を突破できる実力をもった選手が多くそろうが、代表権を勝ち取れるのは上位2人だけ。松元は泳ぎは粗削りだが、専門種目でない分、チャレンジャーとして怖い物知らずで臨めるだろう。16年リオ五輪代表で、先月、4年ぶりに自己ベストを更新したベテランの小堀勇気(ミズノ)にも期待する。

200㍍平泳ぎは五輪さながらの好レースが見られるのでは。この1年で自己ベストを約1秒縮めた佐藤の勢いが、日本記録保持者である渡辺一平(トヨタ自動車)に良い刺激を与えているのか、渡辺の好不調の波も少なくなってきたように感じる。勢いなら佐藤だが、渡辺が先輩としての意地を見せるのか。2人とも世界記録を狙ってくると思うので、どのような記録が出るのかにも注目したい。

池江は泳ぎだけを見ればすでに実力の7~8割が戻ってきているのでは=共同

女子は白血病からの完全復活を目指し、2月に50㍍バタフライで復帰後初優勝を果たした池江璃花子(ルネサンス)がやはり見逃せない。闘病前の姿と比べるとまだほっそりした印象だが、泳ぎだけを見ればすでに実力の7~8割が戻ってきているのではないか。50㍍はパワーが戻らないと難しい種目かと思っていたが、彼女はもともとの腕の長さや肩甲骨の柔軟性を生かしてここまで記録を伸ばしてきた。その復調ぶりは、水泳の常識を覆しているとさえ思う。

今大会は100㍍自由形など4種目にエントリー。彼女は東京五輪について明言を避け「24年パリ五輪でメダル獲得」という目標を掲げているが、それはトップ選手としてメダルを狙いたいという思いからなのだろう。現実的に今回可能性があるのは、100㍍自由形で4位以内に入り、リレー派遣標準記録を突破するなどした選手に代表権が与えられる400㍍リレー。今の勢いなら、代表入りの可能性は十分にある。

4年に1度の代表選考会は、一発勝負ということもあり、五輪と同じぐらい緊張する場所だ。私自身も、現役の時は少しの風邪やケガもないように大会前は気を張っていたし、決勝の舞台でプールに飛び込むまで精神的に追い込まれる状況が続いた。ただ、その厳しい環境を乗り越えれば五輪本番も自信を持って戦うことができる。予選、準決勝、決勝というレース3本の戦い方を含め、選手たちには五輪の予行練習と思って臨んでもらいたい。

星奈津美(ほし・なつみ) 1990年埼玉県越谷市生まれ。五輪は2008年北京大会から3大会連続で出場。12年ロンドン大会では200㍍バタフライで銅メダル、16年リオデジャネイロ大会でも同種目で銅メダルを獲得した。同年10月に引退後、現在は解説者などとして活動する。
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