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7大会連続W杯出場のサッカー日本代表 それが持つ意味

サッカージャーナリスト 大住良之

1993年、Jリーグをスタートさせた人びとの心の底からの願いは、「ワールドカップに出場すること」だった。その年の秋のアジア最終予選では最後の最後に大どんでん返しがあって出場権獲得はならなかった(いわゆる「ドーハの悲劇」)が、4年後には苦しみながらも「アジア第3代表決定戦」でイランを3-2(延長)で下し、初のワールドカップ出場を決めた。

日本が初出場を果たした98年フランス大会で、ワールドカップの出場チーム数が24から32へと増えたことだった。日本の出場は、それ以後、アジアに3.5枠(後に4.5枠)の出場権が与えられるようになってからであり、「出場24チーム、アジア枠2」の時代に出場を果たせなかったのは、少し残念だった。

しかしそれでも、このフランス大会からことしのカタール大会まで「7大会連続出場」というのは、誇るべき記録といえる。4年後、2026年にアメリカ、カナダ、メキシコの3カ国共同開催で行われる大会は出場48チームとなり、アジアには8枠が与えられる予定になっている。こうなると、アジア予選はさらに「広き門」となる。そうなる前の「7大会連続」には、十分価値がある。

今回の出場チーム32のうち、6月に決まるプレーオフを経ての出場3チームを除く29チームを見ると、日本と同じように「32チーム時代」の7回のワールドカップすべてに出場しているのはわずか9チームにすぎない。B組のイングランド(通算16回)、C組のアルゼンチン(18回)とメキシコ(17回)、D組のフランス(16回)、E組のスペイン(16回)、ドイツ(20回)、日本(7回)、G組のブラジル(22回)、そしてH組の韓国(11回)である。

もちろん、「予選の難易度」は地域によって差がある。今大会のイタリアのように、ワールドカップでうまくいけば7試合(決勝あるいは3位決定戦まで)戦う力がありながら、欧州や南米の予選を突破できなかった例がいくつもある。日本と同じ98年に初出場を果たしていきなり3位になり、18年ロシア大会では準優勝しているクロアチアは10年大会で予選落ちし、前回3位のベルギーも06年、10年と連続して欧州予選で苦杯を喫している。

一方アジアのチームは、この7大会に出場した延べ24チームのうち19チームがグループリーグで敗退している。02年に韓国が4位という快挙を成し遂げたが、それ以外では、ラウンド16まで進んだのが日本3回、韓国1回。オーストラリアは06年にラウンド16に進出したが、予選時にはオセアニアサッカー連盟所属。大会時にはアジアサッカー連盟に移籍していたが、ワールドカップ出場は「オセアニア代表」としてだった。

「アジア予選を勝ち抜いても、たいていはグループリーグ敗退。良くてラウンド16止まり」というのが実情であることは否定できない。

それでも、日本は出場した過去6大会の半分、3大会でグループリーグを突破している。地元開催の02年大会、10年南アフリカ大会、そして18年ロシア大会である。18年ロシア大会は、欧州勢は出場14チーム中10チームがグループリーグを突破し、南米も5チーム中4チーム。この「2強」だけで、いわゆる「ワールドカップ16強」のうち14を占めてしまっているのだ。あとは日本と北中米カリブ海代表のメキシコである。

ラウンド16の常連「メキシコ」

メキシコは不思議なチームだ。ワールドカップ出場は今回を含めて8大会連続17大会目。「32チーム時代」の過去6回のワールドカップで、すべてラウンド16に進出し、そこで敗れている。過去には、準々決勝進出が2回あるが、いずれも自国開催の70年大会(16チームの大会)と86年大会(24チーム)。すなわち、「ラウンド16以降のノックアウトステージ」で勝ったのは86年大会の1回だけ(2-0ブルガリア)であり、24チーム時代の94年アメリカ大会を含め、7大会連続ラウンド16で敗退しているのだ。

だが私は、「必ずグループステージを突破する」ところにメキシコのすごさがあると思う。過去6大会連続出場は、前述のように9チームあるが、グループリーグでいちどもつまずかなかったのは、メキシコのほかにブラジルがあるだけなのだ。この間に2回優勝しているフランスも、ブラジルに次ぐワールドカップの主役であるドイツも、そしてイングランド、スペイン、アルゼンチンといった「優勝経験国」も、32チームになって楽になったはずのグループステージで、少なくとも1回は屈辱的な敗退を喫しているのだ。

ただ1チーム今回までのワールドカップ22大会すべてに出場し、5回もの優勝を飾っているブラジルはやはりすごい。力があるだけでなく、ワールドカップの戦い方を十二分に心得ていて、油断して足をすくわれることもない。

過去準決勝にすら達したこともないメキシコは、ブラジルと比較すると、大きく「格」が違うように思えるだろう。しかし7大会連続してグループステージを突破しているという事実に、世界のプロフェッショナルたちは目を見はり、最大限の敬意を払う。どんな強豪も、ブラジルさえも、メキシコを甘く見ることはない。

私は、過去6大会に連続して出場し、1大会おきにではあるがグループを突破し、今回もそうなっても不思議がないのが日本だと思っている。だからドイツもスペインも、日本を軽く見ることなどしないだろう。メキシコほどではなくても、十分な敬意を払われるだろう。

私たち日本人は、日本を「ワールドカップの初心者」のように思っているかもしれない。ブラジルはもちろん、欧州や南米の強豪たちとは、試合をできるだけで喜びと思っているかもしれない。しかし7大会連続出場、過去の6大会のうち半分の3大会でグループを突破している日本は、出場32チームのなかでも上位に位置する十分な経験をもち、どんな強豪にとっても警戒を要するチームであることを理解すべきだと思う。

7大会連続「ラウンド16」で敗れ、それでもその座を失わずに世界と戦うための強化の努力を続けてきたメキシコは、この先のワールドカップで、必ずベスト8、そして準決勝、決勝へと階段を上っていくだろう。そのメキシコの、誰をも恐れない粘り強い戦いに、日本も追随しなければならない。

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