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ディズニーに励まされ摑んだ五輪の夢 競泳・井狩裕貴㊤

一かき一蹴り細部までレースをイメージ

主役候補として参戦した4月の競泳日本選手権。井狩裕貴(イトマン近大)は「人生100回目の公式戦の男子400㍍個人メドレー」に挑んだ。東京五輪代表選考会も兼ねたこのメモリアルな一戦は、20歳にとって劇的な、忘れられないレースとなった。

もともと試合に向けて周到に準備するタイプだ。一かき一蹴りの細かい動作まで徹底してイメージを頭にすり込ませる。「2週間前ぐらいから夜あまり眠れなくて。それぐらい気が張って集中していた」。だが気合があだとなったか、予選はガチガチで7位通過と不本意な結果に。コーチが心配するほど精神的に窮地に追い込まれた。

決勝までわずか7時間。あらゆる過去のレースの記憶を引っ張りだし、ギリギリで組み立て直した最適解は「背泳ぎで隣の選手にリードすれば絶対勝てる」。決勝では100㍍のターン後にギアを上げ、狙い通りに2番手に浮上すると、力強い泳ぎで追いすがるライバルたちを突き放した。

すでに2019年世界選手権で五輪代表に内定済みの瀬戸大也(TEAM DAIYA)には及ばなかったが、同選手権銅メダル相当の4分11秒88と自己ベストで2位に入り、残り1枠の代表権を奪取。「疲れた」という取材エリアでの第一声に達成感がにじんだ。

身長175㌢と決して恵まれた体格とはいえない。それでも4泳法で苦手種目がない総合力の高さと、「努力度が高く、克己心が強い」とコーチやチームメートからお墨付きが出るほどのストイックさで着実にトップ選手への階段を上ってきた。19年7月にはユニバーシアードで当時日本歴代6位となる好記録をマークし、初出場初優勝を果たした。

五輪メダリスト瀬戸や萩野も射程圏内に

同年の日本選手権では自己最高の2位に入った。それまで雲の上の存在だった瀬戸や16年リオデジャネイロ五輪金メダルの萩野公介(ブリヂストン)を、身近なライバルとして射程にとらえ始めたのもこの頃から。「(国内2番手という)このポジションは俺のもの。絶対(東京五輪に)行かなきゃあかんと思った」。遠い夢だった五輪代表を現実的なものとし、自信をもって鍛錬を積んできた。

尊敬する人はウォルト・ディズニー。「If you can dream it, you can do it.(夢を見ることができれば、それは実現できる)」という言葉に励まされ、約15年の水泳人生を歩んできた。幼い頃からの夢をかなえ、次に目指すのは五輪での表彰台。「今後の日本の個人メドレーを背負って立つ存在になれたら」。ディズニーのように、今度は人々に夢を与える番だ。=敬称略

(堀部遥)

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