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海外競馬、国ごとに特徴 現地映像見て実況で戸惑い

ピンクカメハメハでサウジダービーを制し、喜ぶ戸崎圭太騎手ら=AP

実をいうと今回は、2月中旬に行われるはずだった地方競馬の年間表彰「NARグランプリ」について書くつもりでした。しかし、コロナ禍の影響で2021年は表彰式が中止に。昨年1年間、様々な制約がある中で結果を残した人馬の関係者にとって、奮闘が報われるはずだった式典が行われなかったのは残念です。来年は晴れ舞台で受賞者の笑顔が見られることを願います。

2月20日(日本時間21日未明)、サウジアラビアで行われたサウジカップデー。総額2000万㌦(約21億円)と世界最高賞金額を誇るサウジカップをメインとする国際競走デーに、日本からは5頭が参戦しました。サウジカップのチュウワウィザードは9着でしたが、3歳限定戦のサウジダービーをピンクカメハメハが制し、リヤドダートスプリントはコパノキッキングとマテラスカイが1、2着の快挙! 今年もこれからの日本馬の海外遠征に弾みがつく好成績でした。

筆者は今回、このサウジアラビアでのレースを日本国内から実況しました。16年に日本中央競馬会(JRA)が、日本馬の出走する海外主要レースの馬券販売を始めて以来、海外で実況する機会が増えました。しかし、状況によっては現地に赴くことができず、日本国内で国際映像を見ながら実況する場合もあります。特に、この1年はコロナ禍で海外渡航が簡単にできる状況ではなく、致し方ないところです。

現地映像とネットの資料を見ながらの実況に

筆者にとって国際映像でのレース実況は、今回で6カ国目。過去にドバイ、香港、米国、オーストラリア、フランスのレースを映像で実況しました。初めての経験は09年3月、ウオッカが出走したドバイ・ナドアルシバ競馬場のジェベルハッタ。当時はまだアナログ映像で、現在よりも画質が粗く、実況に苦労したのが思い出されます。

この国際映像、国によって様々な特徴があります。それぞれに工夫を凝らした映像なのですが、実況がしやすいかといわれれば話は別。今回のサウジアラビアも、戸惑う部分が少なくありませんでした。

迫力と引き換えの実況しづらい映像

スタートしてからしばらくの間は、馬たちと併走する車載カメラからの映像が続きました。先頭を走る馬のすぐ近くから馬群を斜めに映す形で、確かに迫力は十分なのですが、普段、日本で見ているような真横から馬群を捉える映像とは違い、後方を走る馬たちをはっきりと視認できません。

馬たちの前後の距離感も、斜めの角度からでは判別が困難。メインレースのサウジカップでは、注目を集めた米国のシャーラタンとニックスゴーの道中の競り合いがアップになり、他の馬がしばらく映りませんでした。映るものしか実況できないので、割り切るしかないのですが。

発走直前の映像情報の少なさ

海外のレースでは、事前発表の勝負服のデザインや配色が、当日に変更されることもあり、パドックや本馬場入場の映像で最終確認します。今回のサウジアラビアでもそうした変更がいくつも発生していたのに、出走馬や騎手がレース前に映し出されることはほとんどありませんでした。

実況用に作成した服色表(塗り絵)。直前の変更もあり得るので気が抜けない

スタート数分前、まさにゲートインの直前に勝負服が変更されている馬がいることがわかり、ギリギリで資料を修正する羽目に。サウジアラビアの国際競走は歴史が浅く、こうした映像も含めた情報提供が今後、充実していくことが期待されます。

映像実況のメリットとデメリット 

映像での実況にはメリット、デメリットがあります。メリットは、現地に長距離移動する身体的な負担が少ないことと、現地の放送席の場所に左右されないこと。特に放送席の位置は、競馬場によってはコースがまともに見えないところに置かれる場合もまれにあるためです。筆者自身が経験したことではありませんが、パリロンシャン競馬場の改修工事により、シャンティイ競馬場で凱旋門賞が代替開催された際、仮設の放送席からは死角ばかりで、コースがほとんど見えなかったと聞きました。

デメリットは、映像そのものにトラブルがあると実況できなくなることです。かつて筆者もこんな体験をしました。16年に米サンタアニタパークで行われたブリーダーズカップターフで、理由はわからないのですが、レース前半で映像が止まってしまったのです。

軽快に走っていた馬たちの映像が急に静止画に……。このまま映像が動かなかったらどうしよう、どうやって実況を続けよう?  ほんの数秒でしたが、実況していた筆者にとってはもっと長い時間に感じられました。その後、止まった画面に映る競走馬の名前をとにかく呼んでいるうちに映像が動き始め、事なきを得ましたが、肝を冷やす瞬間でした。

地元サウジアラビアのファイサル王子が所有するミシュリフがサウジカップを優勝したため、場内は大歓声が上がっていたそうですが、実況では雰囲気までは伝えられません。映像だけではわからない、場内の雰囲気や空気感、また競馬場の天気や風などの情報を伝えられるのは、現地で実況するからこそといえます。

と、それぞれの善しあしについてあれこれ記しましたが、我々実況アナウンサーは現地でも映像でも、与えられた環境で全力を尽くします。コロナの流行状況が改善し、状況が許すまでは、国内で映像を見ながらの実況が続きます。このあとは3月に行われるドバイ国際競走や、4月の香港チャンピオンズデーが、次なる日本馬のチャレンジとなりそうです。

もしまた筆者が担当することがあれば、困難な状況下で遠征を敢行した陣営に敬意を払いつつ、正確かつ臨場感たっぷりにお伝えするつもりです。早く現地での実況が再開されるのを待ちながら――。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 小塚歩)

各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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