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アデトクンボ、夢信じてNBA優勝 愛着ある街で戴冠

スポーツライター 杉浦大介

NBA決勝第6戦で圧倒的なパフォーマンスを見せたアデトクンボ㊧=USA TODAY

バスケットボールの歴史に刻まれる、他を支配するような圧倒的なパフォーマンスだった。

20日に行われた米プロバスケットボールNBAの2020~21年シーズン王者を決めるファイナル(決勝)第6戦。50年ぶり2度目の優勝に王手をかけていたミルウォーキー・バックスの地元ファン約6万5000人が会場のファイサーブ・フォーラムの周囲を取り囲み、騒然とした雰囲気に。そんな中で接戦を制したバックスの立役者となったのは、リーグ最高レベルの選手と評価される大黒柱ヤニス・アデトクンボだった。

フェニックス・サンズに7点をリードされて迎えた第3クオーター、積極的に攻めたエースは1人で20得点をマークして粘るサンズを引き離す。この試合の前まで成功率の低かったフリースローも19本中17本を沈めるなど、最後まで攻撃の手を緩めずに勝利を決定的なものとした。

「(アデトクンボは)特別な存在。第3クオーターは彼の活躍で逆転することができた。第4クオーターにはビッグプレーを見せてくれた。ビッグプレー、ビッグブロック。ヤニスのことはもう褒めすぎていて、これ以上褒める言葉を探すのが難しい」

マイク・ブーデンホルザー・ヘッドコーチ(HC)がそう感嘆していたが、実際に多大な重圧を背負ってプレーした第6戦でのアデトクンボの働きはあまりにも見事だった。

この日は50得点、14リバウンド、5ブロックというとてつもない数字を残し、決勝MVPも獲得。紙吹雪が舞う中で仲間たちと抱擁を交わしたアデトクンボは、「自分を信じてくれたミルウォーキーの人たちに感謝したい」と涙した。しかし、感謝したいのは、半世紀ぶりの優勝をプレゼントしてもらった地元ファンの方だったかもしれない。

NBA優勝とMVPの2つのトロフィーを抱えて喜びを爆発させるアデトクンボ=AP

13年のドラフト全体15位指名でバックスに入団した頃、アデトクンボはほとんど無名の存在だった。ナイジェリア人の両親の下にギリシャで生まれた大器は、すぐにその才能を開花させていく。稀有(けう)な身体能力をいかしたダイナミックなプレーで19、20年には2年連続でシーズンMVPを獲得。1973年に唯一の優勝を経験して以降、長い低迷を続けてきたチームを押し上げる推進力になった。

そんな彼もプレーオフでの成功だけはなかなか手にできなかったが、それでも昨年12月、バックスと5年2億2800万㌦(約252億円)で契約延長した。

「チームを去るなんてことはできなかった。終わっていない仕事があったのだから。〝ここは俺の街なんだ〟っていう気持ちだった。僕を信頼してくれる。僕らを信じてくれている。負けたときだってそうだ。だから、なんとしても残された仕事をやり遂げたかった」

アデトクンボのそんな言葉を聞いて、ミルウォーキーの人々は歓喜したことだろう。近年のNBAではスーパースターが強いチーム、他にもスター選手がいるチームに移籍し、手っ取り早く優勝を目指そうとするのがトレンドになっていた。昨季もレブロン・ジェームズが率いるロサンゼルス・レーカーズに現役屈指のビッグマン、アンソニー・デイビスが加わり、移籍1年目で優勝を果たしたのは記憶に新しい。

そんな中でアデトクンボはプロ入り時から愛着を持ってきたミルウォーキーでの戴冠にこだわり、今季、悲願を果たしたのだった。

大勢の地元ファンと共に優勝を祝うアデトクンボ(中央)=USA TODAY

素朴なウィスコンシン州のファンはアデトクンボの活躍を忘れず、通称「グリーク・フリーク」は地元の英雄であり続けるはずだ。そして、注目度の高いファイナルで歴史的なプレーを見せたことで、その知名度は世界的に広がっていくのかもしれない。ファイナル後のアデトクンボの言葉は、バスケットボールのアンバサダーとなりえる自身の立場を理解しているかのようだった。

「僕は国を代表してプレーしている。ナイジェリアとギリシャ、どちらもだ。そしてナイジェリアだけでなくアフリカ全体、そして欧州全体。自分がロールモデルなのはわかっている。世界中の人たち、子供たちが、自分の夢を信じるようになってくれるとうれしい。とにかく信じるんだ。アフリカ、欧州、世界中の人たちに、できるんだってことを見せられたと思う」

アメリカンドリームを体現したアデトクンボはまだ26歳。その時代はまだ始まったばかりだ。謙虚な人柄を備えたスーパースターの行く手に、さらに楽しみな未来が広がっているのだろう。

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