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五輪開催地の子供たち、「楽しみ」と「不安」交錯

新型コロナウイルスという不安要因を抱えたまま、2021年夏に向けて開催準備が進む東京五輪・パラリンピック。競技会場がある地域に住む子供たちは東京大会をめぐる今の状況をどう見ているのか。「オリンピックスタジアム」になる国立競技場や、車いすラグビーなどの競技が予定される国立代々木競技場に近い東京都渋谷区内の小学校を訪ねた。

「鯉(こい)のぼりは英語でcarp streamer(カープ・ストリーマー)です」。浮世絵を題材にして、区立千駄谷小学校の6年生に英語を教えているのは津田塾大学総合政策学部2年の前田美樹さん。東京五輪をきっかけに地域の活性化を目指す、同大の「梅五輪プロジェクト」はタブレット端末で浮世絵を鑑賞できるデジタル教材を独自開発した。前田さんはこの教材を使い、総合的な学習の時間での先生役を務めた。

浮世絵師、歌川広重の「名所江戸百景」の鯉のぼりを描いた作品について説明を受けた子供たちはマスク着用という制約があっても、元気に「カープ・ストリーマー」と声を出し、発音練習を繰り返した。五輪は開催都市である東京の歴史や文化を世界に伝える機会にもなる。6年1組の男子は「外国の人に浮世絵について英語で説明できるようになりたい」と声を弾ませていた。

千駄谷小学校は国立競技場と国立代々木競技場のほぼ中間地点にある。開催地の地元小学校として、競技を体験したり五輪精神を学んだりする「オリパラ教育」に注力してきた。大会の1年延期が決まった後も、子供たちが描いた絵を使った「デザインフェンス」を制作して外壁を飾り、大会を祝う気持ちを表現してきた。

子供たちは延期となった経緯を十分に理解している。それでも6年1組の女子は「日本だけでなく、外国の選手も応援するために学校の飾り付けをして、ずっと準備をしてきた。今も楽しみ」と期待を寄せる。

担任の月沢加奈子教諭は「19年までは近隣のトルコ大使館との交流を通じて東京大会での国際交流について考えるなど積極的に学習の機会を設けていたが、今年はコロナ禍で難しい面がある」と打ち明ける。

そもそも今春は臨時休業が続き、授業が始まっても教育現場は感染予防が最優先。オリパラ教育の優先順位の低下は避けられなかった。ただ子供たちと東京大会について話をすることは多かったそうだ。「チケットを(親が)購入できたので『観戦が楽しみ』と話す子供がいる一方で、『コロナが心配』と言っている子供もいる」。月沢教諭は多様な意見に耳を傾けるよう、心配りをしてきたという。

小学校の正門前の道路は通称「オリンピック通り」。その先の千駄ケ谷トンネルを抜ければ、新しくなった国立競技場がある。「地元では、トンネルが1964年の東京五輪のときにできたことを皆、覚えている」。岡崎千治・千駄ケ谷大通り商店街振興組合理事が強調する。

「この街にはずっとオリンピックの記憶が根付いてきた。それは子供たちにも引き継がれる」(岡崎氏)。ウィズコロナの東京大会は誰もが初めて経験する大会になる。オリンピックスタジアムの地元の子供たちは、その経緯も含めてしっかりと見ているようだ。

(山根昭)

tokyoオリパラ

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