日本がドイツに歴史的白星 W杯、修正力で劇的逆転

奇跡達成までの追加タイム7分間が、しびれるほど長く感じられた。日本のベンチから、選手たちが雪崩のようにかけこんできた。
死に体だった前半とは全く別の顔をした森保ジャパンが現れた。後半冒頭、冨安を入れて3バックに。後ろで数的優位をつくり、ボールを保持して一息付ける時間をつくる。「マンツーマン気味に守ることができ、前のプレスもはまり、かなりアグレッシブにやれた」と遠藤。ドイツの中盤に隙が出来る。日本の反撃が始まった。
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たたみ掛けるように森保監督が切り札を抜く。57分に三笘と浅野を同時に投入。71分には堂安を送り出し、その4分後には南野も投じて攻撃をブーストする。予想もしない日本の変化に、ドイツのうろたえる声が聞こえてくるようだった。
75分、左でボールを受けた三笘がカットインでDFを引き付けて南野を走らせる。折り返しに突っ込んだ浅野が潰れ役になり、裏から詰めてきた堂安が同点弾をたたきこんだ。試合という生き物の奔流に、W杯優勝4度のドイツがのまれていく。自陣のFKで板倉が機転を利かせて前方に送る。そのパスを自分のものにした浅野の、大型DFもGKノイアーもものともしない突進が、歓喜の逆転ゴールとして結実した。

前半の日本は自陣にへばりつかされ、ギリギリでしのいでいただけともいえた。0-0で折り返せれば御の字だったが、PKによる失点でその筋書きは泡と消えた。
その現実に屈しなかった。そこからの変わり身、あらゆる手を尽くして状況をひっくり返えそうとした森保監督の采配は、最後まで諦めないと言ったら諦めないのだというこの人の執念さえ感じさせた。真面目一徹が打った勝負手をたたえるほかない。
「自分たちの良さを発揮する、チームを勝たせることを選手がやってくれた」と森保監督。途中出場の選手はサブでなく、試合を決めるフィニッシャー。総力戦のシナリオをW杯で演じきったイレブンに、優勝国撃破というこれ以上ないドラマが待っていた。
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