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サッカー日本、五輪金メダルへの「距離」

サッカージャーナリスト 大住良之

東京五輪に臨むサッカー男子U-24日本代表メンバー発表のオンライン記者会見をする森保監督=ⓒJFA・共同

戦いは一つひとつ勝ち取るもので、一足飛びに夢が実現するわけではない。18人のメンバーが発表された東京オリンピックのサッカー男子代表チーム。森保一監督が「目標」とする「金メダル」に至るには、1次リーグの南アフリカ、メキシコ、フランスと対戦した後に、ノックアウトステージで3試合を勝ち抜かなければならない。そこまでの「距離」は、どんなイメージなのだろうか。

オリンピックに出場するU-24(24歳以下)日本代表は、6月に28人の選手を招集し、2つの国際試合をこなした。U-24ガーナ代表に6-0、そしてジャマイカのフル代表に4-0。DF吉田麻也、酒井宏樹、そしてMF遠藤航の「オーバーエージ」3人が加わったことで守備が格段に安定し、その守備を土台に攻撃面でも才能あふれる選手が持てる力を十二分に発揮できるようになった。

ボランチでパートナーを組んだ遠藤のボール奪取能力に触発されて、MF田中碧が前につけるパスの力を存分に発揮できるようになったことが、攻撃を一挙に活性化した。前線では、堂安律と久保建英という2人の才能(ペナルティーエリアにかかるところで決定的な仕事をすることができる)が、右サイドとトップ下という役割を自在に交換しながら、チャンスを量産した。

左サイドでは相馬勇紀と三笘薫がまったく違った個性で攻撃に変化をつけた。そして1トップのポジションでは、運動量と相手への圧力の強さを見せる前田大然とクラシックなセンターフォワードタイプの上田綺世が周囲の選手たちを生かしながらゴールに迫った。

これらの試合を経て選ばれた「オリンピック代表」18人は、多くの人を納得させるもので、ほぼ予想されたものだった。私にとって少し意外だったのは、右サイドバックの酒井のバックアップに選ばれた橋岡大樹と、DF/ボランチの枠をひとつ削る形で入れられた三好康児の2人だったが、18人をフルに使って決勝まで6試合を戦い抜くことを想定すれば十分納得がいく人選だった。

右サイドバックの橋岡はセンターバックもこなす多様な能力を買われての選出か=共同

菅原由勢との「二者択一」となったと思われる右サイドバックの橋岡は、状況によってはセンターバックもこなす多様な能力を買われたはずだ。また攻撃の「看板選手」である堂安、久保と同じタイプの三好は、この2人を生かすためにも必要な人材だったのだろう。

18人のバランスを考えれば、長身のセンターバックがもうひとり欲しいところ。しかしそうしたタイプの町田浩樹と瀬古歩夢の2人をあえて「バックアップメンバー」とし、アタッカーの三好を入れたのは、「5人交代制」を生かして前線からのプレスを90分間継続するための人選だろう。東京オリンピックのサッカーも交代は1試合5人まで許されるため、前線の選手は時間を限定しつつも毎試合出場するということになるのではないだろうか。

関塚隆監督の下、1968年のメキシコオリンピック以来のベスト4を成し遂げた2012年ロンドンオリンピックでは、基本的なメンバーはあまり変えずに6試合を戦い抜いた。コンディショニングの成功とともに、大きな負傷者が出なかった幸運も手伝ってのことだったが、今回の東京オリンピックの18人は、誰を出しても見劣りしないパフォーマンスが期待できそうだ。

攻撃の「看板選手」である堂安㊧と久保=共同

さて、それでは、金メダルへの「距離」はどのくらいなのか――。

私は、「ワールドカップのベスト8と同じくらい」とみている。ワールドカップにおいては、日本は過去にベスト16を3回経験している。しかしベスト8をかけた試合で3回とも敗退している。02年にはトルコに0-1で敗れ、10年にはパラグアイと0-0からPK戦で屈し、18年にはベルギー相手に2点を先行しながらも2-3と逆転負けを喫した。ワールドカップ・ベスト8は、日本のサッカーにとって大きな壁なのだ。

グループを突破するのも簡単ではないが、突破しても、そこから勝利を挙げるのが至難の業だ。ワールドカップでのベスト8は、ノックアウトステージでの1勝を意味するが、オリンピックでは12年に準々決勝での1勝(3-0エジプト)を達成しており、ワールドカップの1勝ほどの「壁」ではない。

冒頭で書いたように一足飛びに準々決勝に行けるわけではないが、今回の日本のオリンピックチームにとっての真の壁は「準決勝」になるのではないか。そしてその壁を乗り越えれば、待っているのは8月7日、横浜国際総合競技場での決勝戦だけで、そこまでの道のりでどんな強豪とでも臆せずに戦えるようになっているはずだ。

大会が1年間延期され、U-24のオリンピックになったことは、継続的に強化ができた日本にとって大きなアドバンテージであり、そこにオーバーエージとしてはこれ以上望むべくもない3人が加わったことで、私は、今回のオリンピック代表はどんな強豪とも伍(ご)して戦う力があると評価している。力があることと勝ち上がることはイコールではないにしても、「壁」を乗り越え、日本のサッカーに新しい歴史を築こうという「志」を失わない限り、「金メダル」の可能性はけっしてゼロではなく、実現可能なものと思う。

そしてオリンピック金メダルへの「距離感」がワールドカップでのベスト8と等しいものであるとすれば、オリンピックで壁を打ち破ることが、来年のワールドカップ・カタール大会ベスト8への期待に直結する。

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