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投手運用にチーム色 王道のオリックス・奇策のヤクルト

野球データアナリスト 岡田友輔

1点リードの五回2死満塁、ひいきチームの先発投手には明らかに疲れがみえている。相手の打順が4番に回れば、ファンは何を思うだろう。「優先すべきはチームの勝利だ。頼むから代えてくれ」「勝ち投手の権利まであと1死。もう1人、投げさせてやってくれ」。ベンチの判断は試合の重要性によっても変わる。投手起用はファンを含め、最も意見が分かれるところだ。

セ・パ両リーグともまれにみる激戦となったプロ野球。ペナントレースを振り返ると、各チームの色が出た投手運用が興味深かった。今季は東京五輪による長期中断を挟み、新型コロナウイルス感染拡大の下で九回打ち切りも継続された。多少は無理をさせられる状況で、各球団はどのように投手をやりくりしたのか。

オリックス、リリーフ陣の3連投なし

パ・リーグ首位のオリックスは先発が安定し、オーソドックスな運用ができた。先発の平均投球回数は5.84回、防御率は3.33でいずれもリーグトップ(今季成績は10月21日終了時点。以下同)。17勝を挙げている絶対的なエースの山本由伸を筆頭に、宮城大弥、田嶋大樹らローテーションの顔ぶれをみれば不思議はない。先発の充実を映し、12球団で唯一、リリーフに3日以上の連投をさせることなくシーズンを乗り切った。

オリックスと優勝を争うロッテは対照的だ。柱が見当たらなかった先発の防御率は4.05と下から3番目。5回5失点以上と打ち込まれたのも14試合と2番目に多くなっている。

それでも平均投球回数が5.61と平均程度なのは、リリーフの負担を抑えるため、先発が打たれても我慢して引っ張ってきたためだ。リリーフの3日以上の連投は7回と少なく、うち6回は9月以降。8月までは無理をさせずに消耗を避け、9月になってムチを入れ始めたことがうかがえる。それも3連投をしたのは30歳以上の国吉佑樹、益田直也だけで、若手には無理をさせていない。いかにも投手を大事に使う吉井理人コーチらしい。

セ・リーグで目を引くのは2年連続最下位から大躍進を遂げ、優勝を目前にしているヤクルトだ。昨年まで5年連続12球団最多失点とふがいなかった投手陣の防御率が3.41と昨季(4.61)から1.20も改善している。狭い神宮球場を本拠地としている影響を差し引くと、いまやリーグトップレベルの安定感を誇る。

ヤクルト、先発の登板間隔長く

特筆すべきは先発投手の運用だ。現在の日本では先発6人を中6日でローテを回すのが一般的。しかし今年のヤクルトは登板間隔をたっぷり取って、多くの投手で先発を回した。138試合を終え、ほぼ半分の68試合は先発が中7日以上。中8日以上が12球団断トツの53試合(昨季は120試合で19試合)という〝ゆとり運用〟になっている。

ヤクルトに限ったことではないが、中6日でシーズンを完走できる先発を6人そろえるのはプロといえども難しい。しかし登板間隔をたっぷり空け、休養十分のコンディションで限られたイニングを任せればそれなりの結果を出せる投手であれば、どこのチームにもそれなりにいる。今年のヤクルトはゆったりしたローテを組んだうえに先発を長く引っ張らず、一人前とはいえなかった彼らを戦力に変えた。

代表例が高卒2年目で9勝を挙げ、新人王候補にもなっている奥川恭伸だ。中9~10日で先発と登録抹消を繰り返し、完封ペースであっても七回までで交代させた。目先の白星を考えればもっと多く投げさせる選択肢もあり得たが、高津臣吾監督は揺るがなかった。発展途上の身体への負担を考慮し、中長期的なキャリアを視野に入れてのことだろう。

ワークシェアリングだった先発とは反対に、ブルペンはフル稼働した。リリーフの3連投は15回と2番目に多く、4連投が2回あったのはヤクルトだけ。勝ちパターンで使われる今野龍太、清水昇、スコット・マクガフらの貢献はとりわけ大きい。

ヤクルトと対照的だったのは巨人だ。中4~5日を含め、先発を短い間隔でどんどん投げさせた。と同時に見切りも早く、12球団最多の16試合で三回までに2番手を送り込んでいる。リリーフの3連投は13回と3番目に多かった。先発、救援ともタフだったシーズンの大詰めに待っていたのが10連敗。投手陣の疲労蓄積が一因だった可能性はある。

「炎の10連投」などが称賛された一昔前に比べれば、最近の投手運用ははるかに選手への負担が考慮され、合理的になっている。それでも唯一の正解があるわけではない。それぞれのチーム状況や台所事情により、最善策は変わる。何が最善かはどれだけのタイムスパンで考えるかによっても変わるため、見極めは非常に難しい。それゆえ監督と投手コーチはしばしば衝突し、ファンにとっては納得がいかない事態も起きる。

しかしヤジを飛ばしたくなったら、その裏にどのような思惑や事情があるかを想像してみてほしい。結果は変えられなくても理由が分かれば少なくともストレスは減るし、野球観戦の楽しみが多少なりとも深まるはずだ。

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