/

二刀流大谷、続く快進撃 イチロー以来のMVPも

スポーツライター 丹羽政善

16日のレッドソックス戦で逆転2ランを放ち、チームメートに迎えられる大谷。投打で活躍が続く=AP

久々に会う甥っ子や、友達の子供の成長の早さに驚かされることがある。一方、毎日接している親は、意外とそのことに気づかない。

取材対象に対しても、同じことが言えるのかもしれない。本格的に二刀流選手として復活した大谷翔平(エンゼルス)の2021年シーズンもまもなく2ヶ月が過ぎようとしているが、実に内容が濃い。ホームラン争いで単独トップに立ったり、投げた日に打席に立つだけでなく、交代に伴って守備に就いたりと、話題にこと欠かない。

ただ、それがいつしか日常となり、まひしていたのかもしれない。少し距離をおいて大谷を見ている人たちのほうが、熱量が大きく、一つひとつの事象がより新鮮に映っているようなのだ。

新旧スター選手たちも興奮

22日の試合を終えた時点で、3勝4敗ながら防御率2.75と好調なマーカス・ストローマン(メッツ)が、19日にこうツイートしていた。

「大谷は、神話に出てくる人間のよう。彼がしていることは、驚きを超越している。大リーグにいる選手はもう彼の才能に気づいている。試合後、今日の大谷がどうなっているか、チェックしている自分がいる」

米プロバスケットボールNBAネッツのスーパースター、ケビン・デュラントも12日、「異次元の選手。ザ・ショー(ビデオゲーム)の中で、大谷をトレードで獲得するつもりだ。トレー・ターナーを落とさなければ」とツイートした。リーグでも屈指の俊足リードオフマンとして知られるターナー(ナショナルズ)が、デュラントの投稿に対して「僕は、控えになるんだろうか、トレードされるんだろうか」と応じると、そのやり取りが話題になっている。

18日のインディアンス戦で3試合連続本塁打となる14号ソロを放った大谷=共同

ヤンキースなどで活躍し、通算251勝を上げたCC・サバシアも、大谷が高めのボール球を右中間スタンドに運んだ夜、お手上げの絵文字をツィッターに投稿しており、そうした反応を拾っていたらきりがないが、こんな評価もあった。

週に1回程度、野球に関する様々なデータが届く。19日には「現時点でのAL MVP(ア・リーグ最優秀選手)予測。BetOnlineのオッズ」というのが送られてきた。

それを見ると、なんと1位は大谷で、オッズは4/5。日本とアメリカでは倍率の表示が異なるので、日本的な倍率に直すなら1.8倍。2位はブラディミール・ゲレーロ・ジュニア(ブルージェイズ)で8/1 。こちらは9倍ということになる。現時点では大谷が、断トツの1番人気なのだ。まさか、そこまで他を圧倒しているとはーー。

もっとも、冷静に俯瞰(ふかん)すれば、確かにそうなのかもしれない。

多くの数字でトップクラス

すべて両リーグ通じての順位だが、22日の試合を終えた時点で、14本塁打は2位タイ。長打数、通算塁打は単独トップである。打点は8位タイ。本塁打は12打席に1本のペースで放っており、これは3位。以下は21日の試合終了時点のデータだが、打席数に対するバレルの割合は13.3%で1位。打球がフェアになった場合のバレルの割合も21.2%で1位と、リーグ屈指のパワーヒッターを軒並み上回る。

このバレルというのは、打者の評価において重要な指標で、打球初速と打球角度の組み合わせによって成立する。バレルに必要な打球初速は最低98㍄(157.7㌔)。その場合の打球角度が26度から30度であれば、バレルゾーンに入ったと表現する。打球初速が1㍄上がるごとに打球角度は広がり、99㍄の場合、打球角度は25度から31度、100㍄なら24度から33度でバレルゾーンに入る。

打球がバレルゾーンに入るとどうなるかだが、16年のデータだと、打率は 8割8分2厘。バレルゾーンに入る打球が多ければ多いほど長打や本塁打が増えるので、大谷が、長打、通算塁打でトップに立っているのも、当然の結果なのである。

投手・大谷に話を移すと、19日の登板こそ、らしさを欠いたが、最初の5試合は1勝0敗、防御率2.10。その最初の5試合では、40奪三振を奪いながら被安打はわずか11本。1900年以降、最初の5試合で40奪三振以上、被安打12未満だったのは、大谷が初めてだという。

3年ぶりの白星を挙げた投手としてもコンスタントに好投を見せている=共同

空振り率は37.4%で、22日の試合を終え、今季、のべ100人以上の打者とを対戦している投手ではア・リーグ2位。同1位は、昨季、ア・リーグのサイ・ヤング賞を獲得したシェーン・ビーバー(インディアンズ)の38.6%だが、その差はわずか。スプリットの被打率は4分9厘(41打数2安打)で、空振り率をスプリットに限定すると58.2%に達する。

二刀流としては、日々、歴史が掘り起こされている。

4月4日の初登板では、100㍄以上の球を投げ、100㍄以上の打球初速を記録。これは、2015年にMLBがデータ解析ツール「STATCAST」を導入してから2人目とのことだった。

4月26日にレンジャーズ戦で先発したが、その時点で本塁打はリーグトップタイ。リーグ最多本塁打の選手が先発したのは1921年のベーブ・ルース以来で、それもすでに3度重ねた。複数回を記録したのは、1919年のルース以来だそう。

5月11日のアストロズ戦では、7回を投げて、10三振。降板後はライトの守備に就き、1900年以降、10三振を奪った選手が守備についたのは、1952年のハーベイ・ハディックス(カージナルス)、1970年サム・マクドウェル(インディアンズ)に続いて3人目となった。

エンゼルスの広報が試合前に提供する「ゲームノート」には、そうした歴史が列挙されているが、同時に、埋もれた選手を現代によみがえらせる。振り返れば、2001年のイチロー(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)がそうだった。いや、彼の場合はキャリアを通じて、次々と歴史を塗り替えたといっていいのかもしれない。

2001年のイチローさん(右)以来となる日本選手シーズンMVPの期待も高まる=共同

過去、指名打者がMVPを獲得した例はない。守備につかないことが、どうしてもマイナス評価につながった。だが大谷は、指名打者でもあり、投手でもある。18年、大谷はその二刀流が評価されて、新人王に選ばれた。まだ、気の早い話ではあるものの、このままいけば・・・との期待は高まる。

2001年のイチローも、初夏になって「MVP、あるんじゃないのか?」という声が聞かれるようになり、序盤の勢いのまま最後まで走りきると、新人王、打率、盗塁などのタイトルを獲得。最後にMVPで華を添えた。

大谷は、イチローに続けるかーー。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン