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用具手配から部屋探しまで 球団通訳、外国人選手支える

横浜DeNAベイスターズ広報 丸形佳之

外国人選手の部屋探し、野球用具や宅配サービスの手配――。皆さんはプロ野球の外国人選手の通訳という仕事に対してどのようなイメージを持っているでしょうか。実は冒頭に挙げたのは横浜DeNAベイスターズの球団通訳が行っている仕事の一端なんです。今回のコラムではチーム戦略部国際サポートグループのグループリーダーを務める天野祥通訳へフォーカスを当てて、スペイン語圏の球団通訳になった経緯や現在の仕事について聞きました。

天野通訳がスペイン語への興味を持ったきっかけは、野球ではなくサッカーだったといいます。

天野「中学時代にワールドカップ(W杯)をきっかけにサッカー観戦にはまり、スペインリーグのレアル・マドリードに魅了されたんです。特に当時所属していたラウル・ゴンザレス選手が好きで、サッカーチームをきっかけにスペイン語に関心を持ったんです。もともと英語も音楽などを通じて好きだったこともあり、高校の進路相談では先生から『英語とスペイン語をマスターしたら、世界のどこでも通用する』と後押しされました。大学ではスペイン語を専攻し、キューバへの留学などを通して中南米文化をメインに学んでいました」

英語の講師、在ペルー日本大使館の勤務を経て、現在の球団通訳という仕事に就きました。

天野「大学卒業後、英語の教員免許もあったので1年間英語の講師として仕事をしました。スペイン語をいかせる仕事に就きたいという思いもあり、その後、ペルーの日本大使館で約3年間仕事をさせていただきました。大使館では、現地の大使館員のスケジュール管理や日本からの来客の対応などを行っていました。任期を終えたタイミングでちょうどベイスターズのスペイン語通訳というポストの募集がありました。また、当時同じ職場で働いていた方に球団通訳の経験者がいました。その方から球団での通訳という仕事について知れたことや、私自身も小学校から大学まで野球をやっていたこともあり、ご縁を感じて2015年にベイスターズへ入ることになりました」

球団通訳の仕事内容は記者会見やインタビュー時の対応といったいわゆる通訳業務だけではありません。外国人選手の生活にひもづく身近な悩み相談も含め、様々なサポート全般を通訳が担っています。

天野「外国人選手の取材対応はもちろんですが、来日後の家探しや行政手続きの手伝いなど日本での暮らしを我々通訳がサポートします。球場では普段使っているグラブやバットといった野球用具だけでなく、アンダーシャツやアームスリープといったアパレルの手配の依頼なども。選手が日本という異国の地でプレーにより集中できる環境を整えること全般を担っています。時には、支払い方法の兼ね合いもあってネットショッピングでの商品購入を立て替えたり、おすすめのレストランを予約したりすることも。業務領域は多岐にわたります」

業務の核となる通訳部分では、個々の選手を理解するコミュニケーションと日本語の難しさを改めて痛感したといいます。

天野「人繰りの都合上、全てにおいてマンツーマンで外国人選手に寄り添うことは難しく、複数の選手に対して1人の通訳がついています。1人でいることが好きな選手、逆に常にそばにいてほしい選手、口には出さないけど他の選手へのサポートが偏るとジェラシーを感じる選手など、それぞれの性格は異なります。通訳としては全体のバランスをとりながら普段のコミュニケーションをとることを心がけてます」

「チーム内ではスペイン語(外国人選手)から日本語(選手やコーチ)への通訳をする機会が多いのですが、ニュアンス含めて日本語としてどの表現が最適なのか悩むときがあります。また、インタビューでも時折難しい質問がくることがあります。通訳である自分が咀嚼(そしゃく)して、選手本人へ最も伝わりやすい言葉で伝えてあげることは日々意識しています」

15年からエリアン・エレラ選手やネフタリ・ソト選手、エドウィン・エスコバー選手など様々な外国人選手を担当してきた天野通訳。そのなかでも、約6年にわたってサポートしていたのがホセ・ロペス選手でした。

天野「これまで様々な選手をサポートさせていただいていますが、通訳キャリアで最も長い時間を一緒に過ごしたのがロペス選手です。16年シーズンにロペス選手がゴールデングラブ賞を受賞した際には、当時の守備コーチと私に『君のサポートに感謝します』とスペイン語で彫刻された腕時計をプレゼントしてくれました」

「特に思い出深いシーンが、20年シーズンに彼が日本プロ野球で通算1000安打を達成した時に行われた記念セレモニーです。偉大な記録を記念してサプライズで制作された映像には、ご家族や筒香嘉智選手をはじめ、元同僚からのビデオメッセージがありました。私はお立ち台で彼の隣に立って映像を見ており、感極まりながらも涙を我慢しながら通訳としての仕事をやり遂げました。ロペス選手とは時にぶつかることもありましたが、約6年もの間サポートできてよかったです。彼は現在も母国でプレーしており、SNS(交流サイト)などを通じてやりとりがあります」

一般にイメージされる「通訳」とは違い、外国人選手が野球に専念できる環境づくりにも汗を流すのが球団通訳という仕事です。21年シーズンもプロ野球では何人もの外国人選手が活躍しました。その裏側には、彼らのことをあらゆる面からサポートしている天野通訳のような球団通訳の存在があるのです。

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横浜DeNAベイスターズの広報がプロ野球の裏方として日々奮闘する人たちにスポットライトを当てるコラム「プレーボールの舞台裏」です。

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