大谷翔平が胴上げ投手、侍ジャパン総力戦で世界一に

栗山監督がずっと望んでいた米国との対戦が、WBCの決勝という最高の舞台で実現した。その大団円で大谷がマウンドに立つ。名前がコールされると、米国のファンも大歓声。そして最後、エンゼルスのチームメートのトラウトと至高の対決が待っていた。
100マイルの直球をそろえて追い込むと、スライダーで空振り三振。ほえて帽子もグラブも投げ捨てた大谷を中心に歓喜の輪ができた。
相手は大リーグでもトップ級が集まった史上最強のスター軍団。「臆することなく、正面からぶつかっていきなさい」。試合前、監督はそう言い添えて選手を送り出した。
決勝を今永に託すことに迷いはなかった。1次リーグの韓国戦でのボールの切れ、準々決勝のイタリア戦での安定感。「非常に状態がいいのは見ていてわかった」初回は2番トラウトに二塁打を許したが、ゴールドシュミットとアレナドに仕事をさせない上々のスタート。重圧をかけるかのように鳴り響く「USA」コールを受けても冷静に立ち向かった。

だが、今大会絶好調のターナーに捕まって被弾。二回、失投を豪快に左翼席へ運ばれた。「投げてはいけないコース、反省点です」。それでも、この先制ソロだけで踏みとどまり役目を果たした。
栗山監督もある程度の失点は覚悟していた。「どの程度なら最後までついていけるのかイメージしている。点を取られても慌てないで1点ずつ返しながら、こちらの流れに持ち込めれば。日本にもいい打者がいるので」。その言葉が現実となり、メキシコ戦勝利の立役者だった村上に同点弾が出るなど打線が奮起してリードを奪った。
2番手の戸郷は三回に連続四球を与えながら失点を許さず、五回にはチーム最年少の高橋宏がトラウト、ゴールドシュミットの大リーグMVP経験者から連続三振を奪った。小刻みでも安定した継投が続き、米国打線を封じていく。

五回表を終えてダルビッシュが、五回裏が終わると大谷がベンチを出てブルペンへ向かい、試合を締める準備に入っていた。2人の豪華リレーが再び実現。ダルビッシュはシュワバーに一発を献上する苦しい内容だったが持ちこたえた。
準決勝で敗れた前回大会の雪辱戦でもあった。投手陣を惜しみなくつぎこみ、国内組とメジャー組が融合しての大きな勝利。僅差を勝ちきる日本の底力を見せつけて、3大会ぶりの世界一に上り詰めた。
(渡辺岳史)
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