人気低迷が続く男子プロゴルフ 今こそ2つの組織統合を
ゴルフジャーナリスト 地平達郎

ゴルフ界に貢献のあったプロを顕彰する「日本プロゴルフ殿堂」式典が3月11日に横浜で行われた。
新型コロナウイルス禍の影響で3年ぶりとなる今回は第8回、第9回の同時開催となり、顕彰者の男子・安田春雄、海老原清治、尾崎直道、女子・岡田美智子、塩谷育代ら懐かしい選手たちも壇上に上がり、華やかな雰囲気となった。
日本プロゴルフ協会(吉村金八会長、以下・プロ協会)、日本女子プロゴルフ協会(小林浩美会長、以下・女子プロ協会)、日本ゴルフツアー機構(青木功会長、以下・ツアー機構)の3団体で2010年に設立された日本プロゴルフ殿堂(松井功理事長)も10年が経過してすっかり定着したようだ。
顕彰対象者はその名の通り、プロゴルファーであり、設立当初から「どうしてアマチュアゴルファーの殿堂がないんだ」との不満の声が多くあった。
英国や米国と同様、日本でも草創期はアマチュアがゴルフ界をけん引していた。赤星四郎、六郎兄弟をはじめ、キャディーにゴルフの手ほどきをしてプロに育てたアマチュアもいた。あるいは後年、日本アマチュア選手権に6度優勝した中部銀次郎ら、顕彰しなくてはならない人たちはたくさんいる。
この日来賓としてあいさつした日本ゴルフ協会の竹田恒正会長は「将来、このプロゴルフ殿堂と合同の日本ゴルフ殿堂、ゴルフミュージアムを開設したい」と語っていたが、その「将来」はいったいいつなのか、一日も早い具体策が待たれる。
もう一つ、会場で「ツアー機構の影が薄いね」という声が聞かれた。
現在、日本には男子プロの組織が2つある。ひとつは1957年に設立されたプロ協会で、もう一つはそのプロ協会から99年に独立したツアー機構である。
50歳を超えた尾崎将司がまだ現役バリバリのころで、男子ゴルフ界も勢いがあった。米国でプロゴルフ協会とPGAツアーが別組織になっているのにならって、プロ協会からツアー部門が飛び出した形になった。
しかし、人気あるプロが一人、また一人とトーナメントから姿を消していくとともに、男子ゴルフは勢いを失っていく。さらに近年は松山英樹が主戦場を米国に置き、国内に勢いのある若手が出てこず、ギャラリーも少なくなった。

そこに女子プロゴルフの人気が追い打ちをかける。
今年の国内ゴルフツアー。ツアー機構が管理する男子は25試合、総賞金額約32億円で、女子の38試合、約43億円に完全に水をあけられてしまった。
その男子トーナメントはツアー機構がすべて管理しているのではない。これとは別に、プロ協会も日本プロ選手権などのほかにシニアツアーを14試合、グランド・ゴールド競技6試合を行っており、特にシニアトーナメントはファンも多く、にぎわっている。
国土が広大で、ゴルフ人口もプロゴルファーの数も日本とはけた違いに多い米国で、目的が違う2つの組織になっているのは理にかなっている。
しかし、カリフォルニア州より面積が小さい日本で別組織が必要なのかどうか疑問だし、人気衰退に歯止めがかからない重大危機に「プロ協会だ」「ツアー機構だ」と主張し合っている場合でもない。
プロ協会は「ゴルフの正しい普及ならびにゴルフの振興及びゴルフを通じた社会貢献」を掲げ、ツアー機構は「プロゴルフトーナメントを通じてゴルフの普及と振興を目指す」としている。
文言に多少の違いこそあれ、「ゴルフの普及と振興」は共通しており、目的はひとつということになる。
強くて愛されるプロをつくり出し、コースにお客さんを呼び戻し、ゴルフをやろうとする子供たちをひとりでも増やす。それが普及と振興の唯一の道であろう。
何が足りないのか、何をすべきなのか……。一緒になって男子プロゴルフ再興に知恵を絞る。時は今しかない。