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強い意志胸に帰化 バスケットボール・馬瓜エブリン㊦

ガーナ出身の両親のもと愛知県で生まれ育った馬瓜エブリン(トヨタ自動車)にとって、バスケットボールは物心ついたときから身近な存在だった。自宅のテレビから流れる米プロNBAの華麗なプレーに目を奪われ、10歳ごろの誕生日にねだったのはスーパースターのコービー・ブライアントとアレン・アイバーソンのユニホーム。毎晩、パジャマとして着るほど愛用した。

小学校時代から体が大きく、運動会などで活躍する一方、肌の色などを理由に心ない陰口をたたかれたこともある。「さみしかったし、なんで自分が違うのかをすごく考えた」。支えになったのは「何か言われて落ち込むんじゃなく、日本人だけど外国人ということをどう生かすかを考えなさい」という母の言葉。今に至る人生の羅針盤だ。

皆が同じルールのもとで競い合うスポーツ、とりわけ高さという長所が生かせるバスケットに熱中できたことも悩める少女には救いだった。「全然うまくなかったけど、注目してくれて溶け込めた」。貪欲に練習に取り組んで頭角を現すと、14歳で16歳以下の日本代表候補に声がかかる。

当時はガーナ国籍で、未成年1人では帰化ができないと知った。大きな決断を迫られたティーンエージャーはしかし、迷わず家族会議で訴えた。「自然な気持ちで日本代表になりたいと思ったから、『バスケット選手になりたい』と。みんな後押ししてくれた」

今は同じトヨタ自動車に所属する妹、ステファニーを含む一家4人で日本国籍を取得。リオデジャネイロ五輪こそ選外だったものの、以降は主力に定着していく。フィジカルの強さと一瞬のスピードは他選手にない大きな長所だ。「(海外の大柄な相手は)外に引っ張り出して抜くか、下がったら外からシュート」と攻略法は明確。Wリーグ初優勝の余韻に浸る間もなく代表合宿に参加し、12人の東京五輪メンバー入りへ汗を流す。

他競技を含め、海外にルーツを持つ日本人選手は増えている。多様性の象徴といえるが、活躍の理由を天賦の才だけに求める風潮には違和感を口にする。「生まれ持った体だけでどうにかなるわけじゃない。努力するのはみんな一緒だから」

五輪が開催され、出場できたあかつきには日の丸のユニホーム姿でコートを駆け、味方を鼓舞する姿に注目してもらいたい。「見ている人が『仲間だ』と思ってくれたら、自然とグローバルな社会になる。(自分と似たルーツの)子供たちが『ああなりたい』と思ってくれたら」。かつて自分が胸を熱くしたスターのように、きっと誰かの心を動かせると信じている。=敬称略

(鱸正人)

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