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482万人動員した経験を自信に プロ野球、今季に挑む

コロナ禍1年 スポーツの今③

プロ野球の球場入り口では昨季、観客の検温と消毒を徹底した(横浜スタジアム)=横浜DeNAベイスターズ提供

プロ野球の12球団が一斉に本格始動する2月1日のキャンプイン。球春到来を告げる風物詩も、今年は大きく風景が変わる。宮崎と沖縄が県独自の緊急事態宣言を出したこともあり、ファンのいない無観客でのスタートが決まった。

シーズン前の一大行事が新型コロナウイルス感染の大波の影響を受け、西武の辻発彦監督は「シーズン以上に肉体的にもきつい練習を重ねるなか、ファンの声援があると選手の力にもなる。さみしい思い」としんみり語った。ただ、日本野球機構(NPB)の「地元のサポートがなければキャンプはやれないし、やるべきではない」(斉藤惇コミッショナー)との方針の下、事前準備にぬかりのなかった各球団の受け止めは冷静だ。

選手やチームスタッフ、報道陣が現地に入る前と、キャンプ中も週1回のペースでPCR検査を受けることを決め、12球団が一致団結して厳重な感染予防策を敷くことで受け入れ側自治体の理解を得た。迅速な対応を可能にした背景には、昨年積み上げたコロナ対策の経験値がある。

プロ野球は昨年6月19日、国内プロスポーツの先陣を切って開幕した。専門家の助言を得ながら、連絡先を把握した上でのチケット販売などを定めたガイドラインを作成。各球団はハードとソフト両面で態勢を整え、開幕3週間後には5000人を上限とする観客の受け入れを始めた。

最重要課題は球場内でクラスター(感染者集団)を発生させないこと。DeNAでは観客の移動の流れを何度もシミュレーションし、横浜スタジアムの入場レーンの幅や消毒液の設置場所などを細かく設定。入場時の検温とアルコール消毒を徹底した。

一部の関係者用トイレを観客に開放したり、売店の行列がコンコース内ではなく屋外に伸びるよう誘導したりして、球場内に過密空間が生じないように気を配った。客席では係員14人が巡回してマスク着用を呼びかけた。

横浜スタジアムで試合運営に必要なスタッフは通常350人ほどだが、昨季はきめ細かなコロナ対策を実施するため「20~30人程度増員した」(球場の管理運営を担当するDeNAの大川隆哉氏)という。

巨人の本拠地・東京ドームは屋内球場に観客を迎える前に、既存の換気設備を使って給気能力を1.5倍に高め、観客席付近の空気が16分に1度のペースで入れ替わるようにした。また、空気が滞留しやすいコンコースの天井には、大型送風機を30台設置した。

計482万3578人が球場に足を運んだ2020年のレギュラーシーズン、球場での感染報告は2件にとどまった。斉藤コミッショナーは「プロ野球の文化を守るという目標に向かって一心一体となって難局を乗り切った」と胸を張った。

技術実証に取り組んだ試合には大勢の観客が詰めかけた(2020年11月、横浜スタジアム)=横浜DeNAベイスターズ提供

昨季終盤、巨人とDeNAはカード限定で試験的に収容人数の約8割の観客を入れた技術実証に取り組んだ。行政やIT(情報技術)企業などと組んで、スマートフォンの電波を場内のビーコン(電波受発信器)で感知して売店やトイレでの混雑状況を数値化したほか、二酸化炭素(CO2)濃度も測定。収集したデータは、将来の安全な興行に役立てる。

開幕までの先行きは不透明だが、巨人の山口寿一オーナーは「公式戦に向かっていく姿を国民に見せることが、スポーツの力を示すことになる」と力をこめる。未知のウイルスと向き合った1年で培った知見を自信に、プロ野球はスポーツ界の先導役を自任しながら新シーズンへ向かう。

(木村慧)

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