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天皇杯V浦和、ACLを戦う条件 選手層に懸念あり

サッカージャーナリスト 大住良之

12月19日に東京・国立競技場で行われたサッカーの第101回天皇杯全日本選手権の決勝で浦和レッズが劇的な勝利を飾り、2022年のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)への出場権を獲得した。

アジアサッカー連盟(AFC)が9月に発表したところによると、過去2年間に続き、22年大会もグループステージは「集中開催」で行われ、日本がはいる「東地区」では4月15~30日の16日間(中2日で6試合)に行われる。22年は11月から12月にかけてワールドカップ(カタール大会)となるため、Jリーグは11月上旬に終了する見通しで、ただでさえ厳しい日程がACL出場によって非常にハードになるのは必至だ。

そうしたなかで日本からのACL出場クラブを見ると、川崎、横浜M、神戸の3クラブはここ数年間の積み上げで選手層も厚く、十分2つの大会を戦い抜く力をもっているが、浦和には大きな不安がある。浦和は昨年スタートした「3年計画」が2年目のことし、徳島をJ2優勝に導いたリカルド・ロドリゲス監督を迎え、Jリーグ6位、天皇杯優勝という成果を見せたが、他の3クラブと比較すると、選手層に懸念がある。

12年にミハイロ・ペトロビッチ監督就任とともに力を入れた補強を行い、「黄金期」を築いた。17年にACLで2回目の優勝(堀孝史監督)、18年度には天皇杯を制覇(オズワルド・オリベイラ監督)、19年にはACLで準優勝(大槻毅監督)。そしてペトロビッチ監督時代のような確固たるスタイルを築くべく、ことし、ロドリゲス監督に託した。

ロドリゲス監督は戦術面でチーム力を上げる能力が高く、徳島での4年間でチームを大きく飛躍させた。その監督の要望に応えるべく、浦和は今季前に10人近くの選手入れ替えを断行。さらにシーズン直前には11シーズン中心となってきたMF柏木陽介を「規律違反」で放出。シーズンの半ばには、FWキャスパー・ユンカー、DFアレクサンダー・ショルツ(ともに元デンマーク代表)、日本代表のレギュラーであるDF酒井宏樹、日本代表FWの江坂任といった大物選手を次々と補強、J2の水戸からはMF平野佑一を獲得した。

日本代表の経験のあるDF西大伍(神戸から移籍)だけでなく、今季前にJ2の琉球からきたMF小泉佳穂と栃木から移籍したFW明本考浩がシーズン開幕とともにたちまち中心選手となり、新しい選手を中心に「リカルド・サッカー」が急速に浸透していく。そして夏には、先発11人のうち9人が今季加入した選手という状況も珍しくなくなった。

「立ち位置の浦和」と、他クラブの監督たちは表現する。システムはありきたりの「4-4-2」。しかし選手が自在にポジションを変えながらパスをつなぎ、相手を幻惑する。ポジションを変えながらも、互いの距離やチームのバランスは保たれ、湧くようにスペースに選手がはいってくるサッカーで、シーズン半ばには浦和は他クラブから警戒されるようになる。

ルヴァン・カップの準々決勝では川崎を「アウェーゴール・ルール」で下し、Jリーグでもシーズン終盤に首位川崎に1-1、2位横浜Mに2-1と、上位に伍(ご)して戦う力を示した。ちなみに、シーズン序盤の対戦では、横浜Mに0-3、川崎には0-5で完敗を喫している。

だが、現有戦力で浦和が韓国やオーストラリアの強豪を相手にACLで勝ち上がるのは難しい。最大の問題は得点力だ。今季のJリーグ38試合で45得点は、横浜Mの82得点、川崎の81得点、神戸の62得点と比較すると大きく見劣りする。5月から出場のFWユンカーが9得点を挙げ、8月に戦列に加わった江坂がそれに次ぐ5得点を記録したが、ユンカーはケガが多く、江坂はどちらかといえば「トップ下」タイプで、ストライカー不足は否めない。ここをどう解決するか、ACLに向けての大きな課題だ。

守備力に定評があったMF阿部勇樹が引退し、DF槙野智章、DF宇賀神友弥、オーストラリア代表DFトーマス・デンとの契約を更新しないことにした浦和。センターバックもサイドバックも、JリーグとACLをかけもちで戦うには手薄すぎる。

今季「期限付き移籍」により他クラブでプレーしていた若手には、京都でJ1昇格に貢献した左サイドバックの荻原拓也、相模原で活躍したセンターバックの藤原優大らがいるが、彼らが戻って底上げができるか――。

無失点試合が17試合もあったのは、GK西川周作の「成長」に負うところが大きい。35歳を迎えた西川だが、今季は悪癖が消え、シュートに対応するときに常に両足が地につき、しかもステップワークが非常に良くなった。私は浜野征哉GKコーチの指導のたまものだと思うが、その浜野コーチが今季で退任してしまうのは小さからぬ不安材料だ。

戦力面での不安だけではない。戦術的には優れていても、試合運びの稚拙さが目立つ。天皇杯の決勝戦でも見られた先制点後のトーンダウン、テンポの落ち込みは、シーズン後半を通じてたびたび見られたものだった。

Jリーグが公表している「チーム走行距離」と「チームスプリント回数」のデータを見ると、浦和は走行距離では20チーム中14位(114.016キロ)で1位の鳥栖(123.484キロ)より1試合に10キロ近く、すなわち1人平均1キロ近く少ない。また「スプリント回数」では、163回で20チーム中17位。1位横浜M(211回)の77%にすぎない。

浦和は「走っていない」のだ。逆にいえば、無理をして走らなくても常に的確な「立ち位置」が取れているということであり、ロドリゲス監督の指導の優秀性が証明されたことにもなるが、運動量、スプリント回数を伸ばせば、ハイテンポのプレーをより長く継続でき、試合を支配し、得点も増えるということになるのではないか。

浦和は戦力面、試合運びの両面で間違いなく「発展途上」にある。このままのチームでは、ACLとJリーグのかけもちをすることには大きな不安がある。選手補強とともに、新シーズンに向けての「リカルド・サッカー」のさらなるバージョンアップが必要だ。

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