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サッカー日本代表、W杯へ充実の欧州組(山本昌邦)

11月20日にカタールで開幕するサッカーのワールドカップ(W杯)に向けて、日本代表の明るい話題といえば、欧州組の充実が挙げられる。欧州最高峰の大会であるチャンピオンズリーグ(CL)やそれに続くヨーロッパリーグ(EL)など、日本の選手が活躍する舞台のグレードが確実に上がっているのだ。

日本代表は9月23日に米国と、27日にエクアドルとドイツ・デュッセルドルフで親善試合を行う。ここで充実の欧州組がどんなプレーを見せてくれるのか、非常に楽しみである。

今季のCL、ELには例年になく多くの日本人選手が出場している。CLでは鎌田大地、長谷部誠(以上アイントラハト・フランクフルト)、古橋亨梧、前田大然、旗手怜央(以上セルティック)、守田英正(スポルティング)らが躍動。ELも原口元気(ウニオン・ベルリン)、冨安健洋(アーセナル)、堂安律(フライブルク)、久保建英(レアル・ソシエダード)、南野拓実(モナコ)らが出場機会を得ている。

ここ数年の間に欧州組だけで日本代表を編成できるようになったけれど、CLやELにこれほど多くの選手が出るようになれば、もはや戦う前から自分たちを「格下」などと卑下する必要はないだろう。

実際、9月のCLで欧州王者レアル・マドリードと対戦した時の旗手は実に堂々とプレーしていた。CLやELでは前線からの激しいプレスとショートカウンターを組み合わせ、素早くDFラインの裏を突く攻撃が常態化しているが、そこで普段やり慣れていることを日本の選手もW杯で再現するつもりでやればいいのだから、相手がドイツであれスペインであれ、ひるむことはない。

今季の欧州組からは26人のW杯メンバーに選ばれるための心の張りも感じる。欧州組が希少だったころと違い、今は欧州組の競争相手は欧州組だから、ただ試合に出るだけでは足りず、欧州組の中でも抜きんでたものを示し続ける必要がある。競争のレベルが一段上がったわけである。

そういう覚悟がひしひしと伝わってくる選手に久保建がいる。2019年の代表デビュー以来、逸材と騒がれてきたが、とことん自分の存在価値を上げることにこだわる選手なので、21歳という年齢に甘える気はない。カタールでは初のW杯出場をかなえるという次元ではなく、世界に衝撃を与える自分をイメージしているはず。そういう貪欲な姿勢が今季はスペインリーグ、ELのプレーにも表れている。

久保建と同じ東京五輪組では堂安も好調でゴールを量産。DFの中山雄太(ハダースフィールド)も新天地の英国で頑張っている。三笘薫(ブライトン)もこれから調子は上がってくるだろう。限られたプレーの時間の中でペナルティーエリア内に入っていける三笘の力はスペシャルワン。その突破力はビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)との相性もいい。彼ら東京五輪組には4位に終わった五輪の悔しさを糧に、努力を継続して山を登っている感じがあって頼もしい。

その中で非常に残念なのはDF板倉滉(ボルシアMG)の負傷離脱だ。守備を厚くしたいときはボランチで使うこともできるユーティリティー性はW杯のような連戦が続く大会向きであり、W杯アジア最終予選でも最も頼りになった一人だった。板倉には挑戦を続ける選手ならではのアグレッシブさがあり、選手として伸び盛りの覇気が満ちていただけに、9月の親善試合のメンバーから外れたのは大いに残念。何とかカタールの本番には間に合ってほしいものである。

MFではポルトガルでステップアップの国内移籍を果たした守田が自分の持ち味を発揮している。ボランチという新参者には難しいポジションを古巣の川崎にいた時と同じく、「こうすると相手はついてこられないよね」と自然体でこなしているのが素晴らしい。

現在の日本代表の強みは、この守田を含め、ボランチと2列目のMFの層の厚さにある。モナコでリーグ初得点を挙げた南野やベテランの原口も「俺を忘れるな」という意地をこれから見せるだろう。森保一監督は人選と組み合わせに本大会直前まで、うれしい悲鳴を上げ続けることになるだろう。

本大会までの準備期間の短さを思うと、これまで一度も代表に呼ばれたことがない選手が、いきなり本大会の26人枠に入ることは考えにくい。ただ、従来の23人から26人に枠が拡大したことで、スペシャリティーを持った選手を入れやすくなった面はあると思う。

例えば、札幌の福森晃斗のようなFKのスペシャリスト。今回のW杯使用球は前回ロシア大会のそれに比べて初速は変わらないけれど、25メートルでボール2個分ほど曲がり幅が増すそうだ。ロシア大会よりFKが直接決まる可能性があるわけで、最後の最後に〝代打〟を送り込むことを想定するのも面白いかもしれない。

CLやELで活躍する日本の選手が増えているのは、世界に負けない個の強さを日本の選手が持ち始めていることを意味する。それは当然、代表チームにも還元される。W杯に出て、念願のベスト8以上を果たすには選手が「うまい」だけでは足りず、「強い」ことが望まれる。うまいだけではグループリーグを突破できないのは、過去6大会の日本のW杯の歴史が示している。

一口に「個の強さ」といっても、何を武器にするかはその選手次第。鎌田のようにアイデアを強みにする選手もいれば、遠藤航(シュツットガルト)のように屈強な猛者がそろうドイツ・ブンデスリーガでボールを奪う力を武器にする選手もいる。無いものや足りないものを嘆くより、他には無い恵みに感謝すればいいわけで、それは日本サッカーが先人から営々と積み上げてきた成果の表れでもある。

日本サッカー協会は2030年のW杯でベスト4、50年のW杯で優勝を目標に掲げる。海外組が所属するクラブ、リーグ、環境を考えると、間違いなく日本サッカーの〝水位〟は上がり、上昇のスピードも増している。やがて欧州組というカテゴリーを超え、CLに出ている選手だけで代表が組める時代が来る。そういうロードマップどおりに進んでいると感じる。

(サッカー解説者)

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サッカー解説者・山本昌邦氏のコラムです。Jリーグやサッカー日本代表で活躍する選手、指導者について分析、批評しています。

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