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まちづくり ランナー主役 名所や独自の資産生かす

砂沼湖畔の6㌔コースでランニングを楽しむ市民ら=砂沼ゆるランクラブ提供

高齢化率の上昇や地域産業の衰退が課題となっている茨城県下妻市がランニングなどのスポーツを核にした地方創生に取り組んでいる。筑波大発ベンチャーや東京マラソン財団が協力。官民連携で人を呼び込み、にぎわいを作るモデルになるか注目される。

「メリハリある景色で楽しかった」。2020年11月、下妻市の中央に位置する「砂沼」湖畔の1周6㌔のコースを走った同県かすみがうら市の会社員、大木孝利さん(50)は汗を拭った。夏から月に2日ほど行われている「バーチャルラン」の開催日。現地で「リアル」参加した大木さんは、遠隔地から参戦したランナーたちとも記録を競い合った。 

市は昨年1月、東京マラソン財団と包括連携協定を締結。バーチャルランは記録を測りデータを残せる財団のアプリを用い、登録会員が砂沼を走ったと仮定して競える仕組みで、毎回800人ほどがバーチャルで参加。市とすれば60万人を超す財団の会員組織の登録者に砂沼や市をPRでき、順位に応じてベーコンや梨など市の特産品も贈る。

スポーツを用いた市のまちづくりの取り組みは、18年度から国の地方創生モデル事業に採択された。筑波大発ベンチャー「Waisportsジャパン」がコーディネーターになり、都民の健康増進や生活の質向上をミッションに掲げる東京マラソン財団も「都内で既に高齢化に直面している地区もあり、ともに課題解決を学びたい」と協力。競技場整備や市民マラソン開催といった従来型の枠組みにとどまらず、まちがそもそも持っている「ストック」を生かす点に主眼は置かれる。

核となるのが、桜の名所「観桜苑」があり、55㌶の湖が広がる砂沼広域公園の散策コース。景観を重視するランナーを呼び込もうと、今年半ばまでにはランナーが憩える木製デッキを整備し、走りやすい路面へ一部改修する。Wai社が仲介し、筑波大やスポーツ団体が子供に様々な運動を教える「プレイパーク」や、フィットネスクラブ「R-body project」が市民に実践も交えて体の仕組みや動きを教え、改善度を測る事業も進む。

新型コロナウイルスの影響で足踏みしているが、マラソン財団とは合宿やクリニックを開く構想もある。近くには温泉付き宿泊施設もあり、ツーリズム気分でランニングと旅を楽しみたい層を想定。「市のおいしいものも味わって良さを知ってもらえれば」と市の担当者は話す。「ランナーのまち」を盛り上げようと、昨春にはSNS(交流サイト)などでランニングを通じてつながる有志のコミュニティー「砂沼ゆるランクラブ」も立ち上がった。

市の人口は約15年前をピークに減少に転じ、高齢化率は3割弱。旧市街地には空洞化の懸念もあるが、見方を変えればリノベーションしやすい店舗もある。テレワークの普及により、休暇先で仕事をする「ワーケーション」が広がっているのも追い風だろう。交流人口を増やすだけにとどまらず、「どれだけファンを作れるか。ビジネスや社会的な事業など、投資をしたくなるものを増やすことが重要」とWai社の松田裕雄代表は話す。「ハコモノ」に頼らずスポーツの力を生かす新たな形を示せれば、同じ課題に悩む自治体のヒントにもなりそうだ。

(西堀卓司)

「合宿のまち」あちこちに

合宿誘致をまちづくりにつなげる動きも盛んになっている。静岡県裾野市は2018年にスポーツツーリズム推進協議会が発足し、誘致を本格化。既存の陸上競技場に加え、19年夏までに標高約1450㍍の水ケ塚公園にウッドチップ型クロスカントリーコースを新設した。「ロード、トラックの兼備が重要との意見を参考にした」と市の担当者。宿泊施設で提供するアスリート向けの献立を日大短大部と開発し、静岡大教授が準高地トレーニングの効果の実証実験を行うなどソフトの充実も図る。

新型コロナウイルスの感染拡大によるキャンセルがありながら、20年度の合宿目的の宿泊者は12月末時点で延べ2081人と2年前の3倍近くに増加。経済波及効果は約3200万円に上る。市は着替え場所などで協力できる施設を募集し目印でのぼり旗を立てるなど、一般ランナーたちの迎え入れにも本腰を入れる考えだ。

北海道深川市は空港までの送迎やレンタカーの無料貸し出しなどのサービスを実施。閉校した中学校の校舎を改修して18年にオープンした合宿向け宿泊施設には昨年、最新機器を備えたトレーニング室も作った。夏の合宿受け入れは19年度に167チームと5年前の4倍以上になったという。

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