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ランニング、気が乗らないときの対処法は

ランニングインストラクター 斉藤太郎

ランニングのコースや過ごし方のモードを切り替えて新鮮な気分を保つことが大切だ

キャリアを重ね走行距離が増えてきた方でしたら、走り込みによっていつしか疲弊気味になったり、痛みにさいなまれたりすることがあります。新型コロナウイルス禍をきっかけに走り始めた方は、走りだして約1年。同じコース、同じテンションのランニングの繰り返しでも、はじめの頃は走力が高まり、体重が減るなど明らかな変化を感じワクワクしていたと思います。ですが「ランニングブルー」と称されることもありますが、マンネリ化や停滞期を迎える方が多くいます。

ランニングが好きだったはずなのに……。義務となったり、ワクワクしなくなったり。コロナ禍で大会が開催されないことも拍車をかけ、走る目的を見失っている方が少なくありません。

ラン歴38年の私にもあまり走る気にならない日があります。今回はそんなときの対処の仕方や工夫を紹介させていただきます。

チャンネルの切り替え

ランニングのペース、コース、過ごし方のモードを切り替えましょう。私の場合、ハーフマラソンペース相当の心拍数(1分あたり180回)を超えるスピードをコンスタントに入れると体がシャキッとし、頭はさえて仕事がはかどると感じます。終始ハイペースの必要はなく、1㌔2~3本や1分間走5セットなどで試してください。スローランばかりが続くと心身ともにどんよりとしてしまうと感じます。

時間を多く取れる日には、2時間の長時間持続運動。ランとウオークを交ぜながらゆっくり脚を動かし続けます。コースは未開拓ルートを選びます。道に迷ったりしながら新コースを開拓するのもよいでしょう。普段の道順とは反対に進むと見えてくる景色も異なります。ほかにも一日中歩く、山登り、泳ぐ、日帰り温泉で体をメンテナンスするなど、ご自身で「○×デー」をつくってみると新鮮さがもたらされます。

反対に、慣れたコース、代わり映えのない環境下の行動では脳が興奮しなくなってしまうそうです。ランニングを習慣化できたのは素晴らしいことなのですが、繰り返すうちにワクワク感が失われたり、ただこなすだけに陥ったりしないよう、新鮮さを大切にしましょう。

例えば、上り坂練習は必ずしも斜度が急だからきついわけではありません。普段の坂道より斜度がゆるやかだとしても、未経験の坂道はきつくて効き目を感じることがあります。コース、手順、走り方など、あえて慣れない、前例のない環境に身を置き、様々なことを脳が予測するようなランニングを試してみてください。

こうした非日常的なランニングを「明日やってみよう」などと行き当たりばったりで取り組むのではなく、ある程度前もって予定し、ダイアリーにいくつか書き込むことで予定の「軸」にすることが大切です。軸と軸との合間に普段のランニングを埋めていきます。軸となる予定は、時には友人とのランもよいのではないでしょうか。少し先の軸を見据えて取り組む普段のランニングは緊張感の伴うものとなるでしょう。軸のない日々とは雲泥の差です。

広角的にランニングライフを捉える

走力向上や記録更新を目指す方も、自分の体と向き合い、健康的にずっと走り続けていくという価値観を携えていただけたらと思います。というのも、目先にとらわれた好タイム練習の追求が過剰になると、痛みを我慢して走り続けることでけがが悪化したり、休養と栄養が後回しになったり、健康体が崩れたりするなどの弊害を生むことがあるためです。ランニングを通して体と向き合うこと。資本となるご自身の体にしっかり投資してあげることを楽しめるくらい広い視野を持ってください。

健康的にずっと走り続けていくという価値観を持つことが重要になる

果樹の話ですが、育った実を間引く「摘果」という作業があります。我が家にあったミカンの木は、結実した数に任せて摘果をせずに育てたところ、小さな実がいくつか取れたものの、結局枯れてしまいました。勢い任せではいつしか枯渇する。あえて数を絞ることの大切さを学んだのでした。

この前あったアンケートに「ランニングにいくらかけていますか?」という設問があり、答えに窮しました。というのもシューズ、ウエア、参加料におさまらず、ケアや「体のために何を食べて、何は避ける」などを含めて、全ては質の高いランニングができる体への投資という感覚なので、計算はできないと思いました。みなさんはいかがでしょうか。

続けることを強化する

RPGゲームでは、少しずつ段階を踏んで強い相手、ぎりぎり倒せそうな相手が立ちはだかります。続ける意欲を強化する仕組みとして、あえてそのような構成になっているそうです。似た考えで、確実に正解できる1問とか、100点を取れる形のテストを繰り返すことで勉強を定着させる作戦があるそうです。ランニングを前向きに続けるのに、こうした心理マネジメントが応用できそうです。

現状を冷静に把握し、ちょっとの努力で達成できそうな目標を設けてみてください。「明日は朝6時に起きて走る」「今日は10㌔完走」「休日は朝と夕方の2回走る」といった感じです。達成したら、ご褒美を与えることを欠かさずに。脳はクリアできた喜びとその報酬に興奮し、次もまた頑張ろうという好循環がもたらされるでしょう。

当然ながら、家でニュースやスポーツ中継を見ている間は走ることはできません。どうしても見たい番組がある、でも走らなければ、というときはスマートフォンでラジオを聴きながら走ることがあります。バランス感覚をつかさどる半規管の機能を生かすため、耳はふさぎません。折しもニッポンランナーズが拠点にする千葉県佐倉市の田園地帯はイノシシが増えており、夜間はラジオなどで音を出して出歩くことが推奨されています。よって、このスタイルのナイトランは筋が通ったものになります。

色々な考え方を紹介させていただきました。日々の似たような行動パターンからの脱却、今のルールの中で新鮮な風を吹かせることが、ランニングを含め生活のあらゆる部分に求められているのではないかと思います。

さいとう・たろう 1974年生まれ。国学院久我山高―早大。リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表選手を指導。2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ、19年理事長に就任。走り方、歩き方、ストレッチ法など体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。300人を超える会員を指導するかたわら、国際サッカー連盟(FIFA)ランニングインストラクターとして、各国のレフェリーにも走り方を講習している。「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。エッセンシャル・マネジメント・スクール特別研究員。著書に「こけし走り」(池田書店)、「42.195KM トレーニング編」(フリースペース)、「みんなのマラソン練習365」(ベースボール・マガジン社)、「ランニングと栄養の科学」(新星出版社)など。

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