メッシ集大成、2度目のMVP 劣勢覆す一瞬のきらめき ワールドカップ - 日本経済新聞
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メッシ集大成、2度目のMVP 劣勢覆す一瞬のきらめき

「神の手」のような裏技もなければ、5人抜きでゴールをこじ開けたわけでもない。誤審を防ぐカメラが目を光らせ、編み目のきつい守備網が築かれた現代サッカーでは当然のことだ。それでも国民のすがるような祈りに応えて36年ぶりの優勝をもたらしたメッシは、2年前に亡くなったマラドーナと肩を並べ、長く崇拝の対象となるのだろう。

なにしろアルゼンチンというチームは、攻撃のギアチェンジを担うメッシなしでは成り立たない。この大一番では故障から復帰した1歳下のディマリアに仕事の一部を委ねることができたが、2ゴールに絡んだ相棒は後半途中でお役御免。以降の劣勢をはね返せるのは35歳の主将だけだった。

チーム全体が疲弊して足が止まり、メッシ自身も珍しく前半から空中戦や競り合いにも参戦した影響でドリブルの切れがトーンダウン。刀折れ矢尽きたかに見えた延長後半、一瞬のきらめきで奪ったゴールがなければフランスの勢いにのまれていただろう。

途中出場で元気なLa・マルティネスと、大会のヤングプレーヤー賞に輝いた21歳のフェルナンデスを従えてのカウンター。それまで相手守備陣の前をうろうろ歩くばかりだったメッシが、残ったエネルギーをつぎ込んで中へ滑り込む。GKがはじいた先へ真っ先に駆け寄り、右足で放ったシュートは当たりが弱かったが、クリアされる一瞬前にゴールラインを越えていた。

フィニッシュの少し前、フェルナンデスがLa・マルティネスに出したパスは肉眼では真横から見てもオフサイドではないかという際どいタイミング。今大会で導入された半自動判定システムがぎりぎりでDFと重なっている証拠を映し出さなければ、果たしてゴールが認められていたかどうか。審判を欺いた「先代」と違い、審判をアルゼンチンの味方につけたところがベビーフェースのメッシらしい。

「これが最後」と明言して臨んだ5度目の挑戦で悲願のワールドカップを掲げ、史上初の2度目の最優秀選手「ゴールデンボール賞」を受賞。通算13ゴールはペレ(ブラジル)を抜いて歴代4位タイ、通算26試合出場はマテウス(ドイツ)を抜いて史上1位に。まさに大団円だ。

「ピッチ上でメッシを助けてくれる選手、メッシと一緒にいて心地よくプレーできる選手」を集めたチームづくりをしてきたスカロニ監督は、それが正しかったと証明した。「彼は比類ない選手。チームメートに多くのものを与えてくれる」

当の本人は記者会見をすっぽかし、シャンパンを片手に歌い踊る若い仲間たちとパレードへ。陽気でよく走る若手との共闘は、メッシ自身も心地よかったに違いない。

(ルサイル=本池英人)

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