エムバペ恐るべし、頂上逃すも決勝ハットトリック史上2人目 - 日本経済新聞
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エムバペ恐るべし、頂上逃すも決勝ハット史上2人目

ワールドカップ(W杯)のファイナルは大の好物らしい。4年前、19歳にしてゴールも決めてトロフィーをつかんだエムバペが、今度はハットトリックをやってのけた。

10代でW杯決勝でのゴールを挙げたのは史上最高の選手とうたわれるペレ以来2人目となる快挙だった。今回の決勝でのハットトリックも1966年のジェフ・ハースト(イングランド)以来、史上2人目。これまた、次にお目にかかれるのはいつのことやらという歴史的な出来事。

2度目のW杯は8得点で得点王、W杯通算得点は12点へ伸びた。通算得点ではこの試合で13点とした35歳のメッシの後じんを拝している。とはいえ、エムバペはW杯をあと3回出場してもおかしくない23歳である。メッシはもとよりG・ミュラー(14点)やロナウド(15点)、最多得点のクローゼ(16点)に追いつき追い越すのもそう難しくなさそうだ。

1試合で2度のPKを平然と決める胆力にも恐れ入るが、たまげるのは81分のダイレクトボレー。アルゼンチンはほんの一瞬、最終ラインの背後に隙を許したにすぎない。そこに電光石火で入り込み、いとも簡単に決めてしまう。

アルゼンチンに幸いだったのは、70分過ぎまでフランスがこの傑物を生かし切れていなかったことか。選手交代に伴って中央に持ち場を移し、その後に2トップの一角に変わったあたりから、怪物は牙をむきだした。

時間とスペースの余裕を与えるともう手が付けられない。思い切りアクセルを踏んで構わないサーキットに降り立ったスーパーカーのごとく、存分にエンジンをふかした。加速が違う。相手は3人がかりで食い止めるのがやっとで、単体で試合全体を動かしてしまう。そこはタイプは違えど、全盛期のメッシら歴代最高の選手と相通じる。

W杯の記録に彩られたエムバペに欠けているのは欧州チャンピオンズリーグ(CL)のタイトルくらいだろうか。先に所属クラブでそうしたタイトルを山ほど手にして、ようやくW杯にも祝福されたメッシとはたどっているルートが正反対のようでもある。「だからまだメッシには及ばないよ」と口さがないアルゼンチン愛好者たちは言うのかもしれない。

W杯王者になった4年前から所属はパリ・サンジェルマンのまま。新たな挑戦で何らかの新たな力を加えていくエムバペも見てみたい気がする。ともあれ、この若者には時間がたっぷり残されていて、先々のW杯でも驚きのプレーを楽しめそうな予感もまだまだ残されている。

(ルサイル=岸名章友)

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